今年で3年目のシーズンを送るLIVゴルフだが、サウジアラビアの政府系ファンド、PIFが潤沢な資金で支援しながらも、特に米国での開催コースのほとんどが“普通”であることに選手からは不満の声が上がってきた。
グリーンブライアー・リゾートのザ・オールドホワイトC、トランプ・ナショナル・ドラル以外にも、ラスベガスCC、ヒューストンGC、ナッシュビルのザ・グローブ、シカゴ郊外のボリングブルックGCなどが米国内での開催コース。しかし『統合』が話し合われていながらも、LIVゴルフを開催したコースからPGAツアーは撤退をしている。メキシコ、カンクンのマヤコバにあるエル・カマレオンGCはLIVゴルフを開催した結果、PGAツアーの「ワールドワイド・テクノロジー選手権」は同じメキシコのエル・カルドナル at ディアマンテに舞台を移した。
そんななか、開催コースのレベルアップをしたいLIVゴルフは、2015年に「全米オープン」を開催したチェンバーズ・ベイと交渉を開始したという。
同コースは米ワシントン州シアトル郊外、タコマに位置し、07年に開場すると08年にはすぐに全米パブリックのニューベストコースに選出。全米ゴルフ協会(USGA)との関係が深く、10年には「全米アマ」が開催。5年後には全米オープンが行われジョーダン・スピース(米国)がダスティン・ジョンソン(米国)とルイ・ウーストハウゼン(南アフリカ)を1打差で抑えて勝利した。
同コースは実は全米オープン開催を招致するために作られたリンクス風のパブリックコース。パブリックコースでの開催がトレンドでもあったUSGAはオープンから8年後という短さで開催した。しかしながらギャラリー観戦がしにくく、フェアウェイが広すぎなどと酷評された。実際に今後の全米オープン開催リストにはチェンバーズ・ベイの名前はない。
全米オープン開催コースとして有名になり、週末はなかなか予約がとれないほどの人気となったが、全米オープンから10年、LIVゴルフが開催されればさらに有名になるかもしれない。
地元紙のタコマ・ニューストリビュートによるとチェンバーズ・ベイがあるワシントン州ピアース郡の行政担当者に、LIVゴルフのマーケティングを務める会社がアプローチをしていると報られ、ピアース郡はこれを認めている。
「LIVゴルフは政治的、ゴルフ界的に問題はあるが、54ホールの大会を開催すれば500万ドル(約8億円)のグッズや売店の売り上げが見込める。大きな魅力がある」と前向きな姿勢を見せている。ちなみにこのチェンバーズ・ベイは22年の「全米女子アマも開催され、馬場咲希が優勝したコースでもある。(文・武川玲子=米国在住)