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    240ヤードドライブにダンボも驚愕… 米国の“還暦”ママさんゴルファーがすごすぎる【記者の目】

    240ヤードドライブにダンボも驚愕… 米国の“還暦”ママさんゴルファーがすごすぎる【記者の目】

    配信日時:2022年3月29日 00時00分

    • LPGA
    いまなお現役のジュリ・インクスターは、後輩を勇気づけている
    いまなお現役のジュリ・インクスターは、後輩を勇気づけている (撮影:福田文平)
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    今から5年前、キム・ハヌル(韓国)に取材をしたときに“憧れの選手”を聞いたところ即座に返ってきた名前があった。「結婚して、子供を産んでも長くプレーされました。まさにロールモデルです」。今年、米国ゴルフ協会が与える最高の栄誉賞「ボブ・ジョーンズ賞」を受賞したジュリ・インクスター(米国)である。

    同じくレジェンド、アニカ・ソレンスタムのスイング【連続写真】

    日本で言えば生駒佳与子、安井純子らと同じ1960年生まれの御年61歳。「全米女子アマ」3連覇などアマチュア時代から華々しい成績を残して、上原彩子が生まれた83年にプロ転向する。同年に初優勝を遂げると、翌年には現在の「シェブロン選手権」でメジャー初制覇を成し遂げた。その後も活躍を続け、積み上げた勝利は「31」、うちメジャーは7つでキャリアグランドスラムを達成。2000年には世界ゴルフ殿堂入りを果たした。ちなみにこの時、笹生優花ら“新世紀世代”はまだ生まれていない。

    そんなレジェンドが「JTBCクラシック」に参戦した。インクスターらしい体全体を使ったスイングは今なお健在。ドライバーを握れば240ヤードをかっ飛ばす。同組のステイシー・ルイス(米国)、“ダンボ”ことチョン・インジ(韓国)にもさほど遅れを取らない。ショットをロープの外まで曲げて花壇に入れてしまった場面でも、ジョークでギャラリーを笑わせる。このあたりも大御所の余裕といったところか。

    結果はトータル12オーバー・142位タイで予選落ち。スコアこそ厳しいものとなったが、最終18番ではチップインバーディ。右手を挙げて集まったギャラリーを熱狂に包む辺りは、やはりただものではない。現役を続ける理由はゴルフが好きだから。いたってシンプルだ。

    2日間をともにしたインジは「彼女の一番下の子供が私と同い年なの。だからジュリは私の母と同じ年齢くらいに違いないわ」と笑顔を見せつつ、大先輩のプレーに賛辞を贈った。

    「一緒にプレーできる機会はあんまりないから、ジュリがプレーするのを見られてとてもうれしかった。いま私は27歳だけど、22歳のころとの違いをものすごく感じている。だから彼女が自分のコンディションをキープするのは、ものすごく大変に違いないと思う。想像できないくらい。だから一緒にプレーできて、彼女はほんとに素晴らしいと思った。そして、私たちにとても良いお手本になっていることを感謝している、と伝えたいわ」。

    インクスターのプレーは、考え方をも変えさせる力を持つ。「正直に言って、若いときには子供ができたらプレーするのはやめようと思っていたの。そのほうが子供ためにはいいと思ったから。だけど、いまはたくさんの選手が、子供がいてもプレーを続けている。私の気持ちも変わったの。きっとゴルフと家族の両立ができるんじゃないかなと思っているわ」。私にもできる、そう思わせるには十分だと。「だけど、ボーイフレンドがいないのが問題だけど(笑)」というオチまでいただいてしまった。

    もちろん、簡単なことではない。同じように産休からツアーに復帰後、シード権を獲得しているツアー6勝の茂木宏美は、産後の難しさについてこう言っていた。

    「出産する前はやりたい動きがあったら、練習すればできた。でも出産してから、“こういう球が打ちたいからこういうスイングをする。そのためにはこの筋肉はこう動かして…”というところでつまずいた」。

    特に細かい動きに苦戦したという。「やっぱりアプローチ、パターですね。ドライバーなどは遠心力もあるからすぐに直る。でもショートゲームが本当にうまくいかなかった。特に、微妙なタッチ。パターは“止めるところは止めて、動かすところは動かす”と言った具合に体を分離しないといけない。それができないんです。すごく悩みました。止めたいところが動いちゃう」。繊細な動きを取り戻すのは並大抵のことではないのだ。

    横峯さくら、若林舞衣子、大西葵と日本の選手も産休制度を利用して出産後、ツアーに復帰する選手も増えてきた。その横峯は今週行われる海外メジャー「シェブロン選手権」に出場する。多くの選手を苦しめたミッションヒルズで、どんなプレーを見せてくれるのか。そしていつの日か、出産を経て、還暦を過ぎてなお「全米女子オープン」の予選会に出るような選手が日本からも出てくることも楽しみとしたいと思った。(文・秋田義和)
    今から5年前、キム・ハヌル(韓国)に取材をしたときに“憧れの選手”を聞いたところ即座に返ってきた名前があった。「結婚して、子供を産んでも長くプレーされました。まさにロールモデルです」。今年、米国ゴルフ協会が与える最高の栄誉賞「ボブ・ジョーンズ賞」を受賞したジュリ・インクスター(米国)である。

    同じくレジェンド、アニカ・ソレンスタムのスイング【連続写真】

    日本で言えば生駒佳与子、安井純子らと同じ1960年生まれの御年61歳。「全米女子アマ」3連覇などアマチュア時代から華々しい成績を残して、上原彩子が生まれた83年にプロ転向する。同年に初優勝を遂げると、翌年には現在の「シェブロン選手権」でメジャー初制覇を成し遂げた。その後も活躍を続け、積み上げた勝利は「31」、うちメジャーは7つでキャリアグランドスラムを達成。2000年には世界ゴルフ殿堂入りを果たした。ちなみにこの時、笹生優花ら“新世紀世代”はまだ生まれていない。

    そんなレジェンドが「JTBCクラシック」に参戦した。インクスターらしい体全体を使ったスイングは今なお健在。ドライバーを握れば240ヤードをかっ飛ばす。同組のステイシー・ルイス(米国)、“ダンボ”ことチョン・インジ(韓国)にもさほど遅れを取らない。ショットをロープの外まで曲げて花壇に入れてしまった場面でも、ジョークでギャラリーを笑わせる。このあたりも大御所の余裕といったところか。

    結果はトータル12オーバー・142位タイで予選落ち。スコアこそ厳しいものとなったが、最終18番ではチップインバーディ。右手を挙げて集まったギャラリーを熱狂に包む辺りは、やはりただものではない。現役を続ける理由はゴルフが好きだから。いたってシンプルだ。

    2日間をともにしたインジは「彼女の一番下の子供が私と同い年なの。だからジュリは私の母と同じ年齢くらいに違いないわ」と笑顔を見せつつ、大先輩のプレーに賛辞を贈った。

    「一緒にプレーできる機会はあんまりないから、ジュリがプレーするのを見られてとてもうれしかった。いま私は27歳だけど、22歳のころとの違いをものすごく感じている。だから彼女が自分のコンディションをキープするのは、ものすごく大変に違いないと思う。想像できないくらい。だから一緒にプレーできて、彼女はほんとに素晴らしいと思った。そして、私たちにとても良いお手本になっていることを感謝している、と伝えたいわ」。

    インクスターのプレーは、考え方をも変えさせる力を持つ。「正直に言って、若いときには子供ができたらプレーするのはやめようと思っていたの。そのほうが子供ためにはいいと思ったから。だけど、いまはたくさんの選手が、子供がいてもプレーを続けている。私の気持ちも変わったの。きっとゴルフと家族の両立ができるんじゃないかなと思っているわ」。私にもできる、そう思わせるには十分だと。「だけど、ボーイフレンドがいないのが問題だけど(笑)」というオチまでいただいてしまった。

    もちろん、簡単なことではない。同じように産休からツアーに復帰後、シード権を獲得しているツアー6勝の茂木宏美は、産後の難しさについてこう言っていた。

    「出産する前はやりたい動きがあったら、練習すればできた。でも出産してから、“こういう球が打ちたいからこういうスイングをする。そのためにはこの筋肉はこう動かして…”というところでつまずいた」。

    特に細かい動きに苦戦したという。「やっぱりアプローチ、パターですね。ドライバーなどは遠心力もあるからすぐに直る。でもショートゲームが本当にうまくいかなかった。特に、微妙なタッチ。パターは“止めるところは止めて、動かすところは動かす”と言った具合に体を分離しないといけない。それができないんです。すごく悩みました。止めたいところが動いちゃう」。繊細な動きを取り戻すのは並大抵のことではないのだ。

    横峯さくら、若林舞衣子、大西葵と日本の選手も産休制度を利用して出産後、ツアーに復帰する選手も増えてきた。その横峯は今週行われる海外メジャー「シェブロン選手権」に出場する。多くの選手を苦しめたミッションヒルズで、どんなプレーを見せてくれるのか。そしていつの日か、出産を経て、還暦を過ぎてなお「全米女子オープン」の予選会に出るような選手が日本からも出てくることも楽しみとしたいと思った。(文・秋田義和)

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