<ANAインスピレーション 最終日◇2日◇ミッション・ヒルズCC ダイナ・ショア・トーナメントC(6,763ヤード・パー72)>
奇跡のイーグルを狙ったボールは、無情にも池に消えたかに見えた。わずかに救われ、池のほとりに落ちたボールはスタンスが取れない。靴を脱ぎ、ゴルフパンツをヒザまで上げて池の中へ。そこから執念のパーセーブにつなげた上原彩子。惜しくもプレーオフ進出に3打届かなかったが、最終ホールで見せた意地のパーに観客は熱狂した。
【関連写真】美しきポピーズ・ポンド
1977年に樋口久子が「全米女子プロ」を制してから41年。日本人女子による2度目のメジャー制覇が見えた「ANAインスピレーション」。初日から3日間アンダーパーを重ね、最終日も4バーディ・1ボギーの「69」。トータル12アンダーの8位で大会を終えた。一時は首位に並ぶなど、し烈な優勝争いを演じた上原。笑顔を見せたが、内心はどのように思っているのだろう。
昨年の夏から本格的なスイング改造と意識改革に取り組んだ。米ツアーでも活躍し、昨年7月から上原を見るテッド・オーコーチがいう。「本気で勝ちたいなら飛距離は絶対に必要。ツアーでは、飛距離がアドバンテージといわれたのは昔。今は飛ぶのが当たり前になっている」。厳しい言葉を浴びた上原はこのオフ、新生・上原に姿を変えるべく、すべての改善に着手。飛距離は伸び、生命線の正確なショット、小技もさらに磨きをかけた。先週行われた「キア・クラシック」では順位こそ33位タイながら、4日間アンダーパーを並べメジャー入りした。
最終日は世界ナンバー1のフォン・シャンシャン(中国)とのラウンド。シャンシャンでさえ苦戦する難コース相手に、上原は果敢に立ち向かった。体格では大きく劣る上原だが、幾度もシャンシャンをアウトドライブ。この日「74」をたたいたシャンシャンをスコアでも圧倒し、大幅チェンジの成果を見せつけた。「あとは運も問題。勝つためには運も必要なので」。裏を返せば、それだけプレーの内容には満足しているということだ。
技術、飛距離への自信が増したことで、意識も変化した。「勝てないことはない」。4日間、上原がいい続けた言葉が印象的だった。「このコースでここまでできるのだから、どこにいっても勝てる力がついた」と、コーチのオーも太鼓判を押す。「シーズンはじめのメジャーでここまでできた。今年が楽しみです」。悔しさを押し殺して、上原は柔らかな笑みを浮かべた。
「同じ18番でも今日とは違う池に入りたいですね」。優勝者が18番の池に飛び込むのが恒例となっている本大会。日没のため明日に持ち越されたプレーオフに残ることは叶わず、通称ポピーズ・ポンドへの飛び込みはお預けとなってしまったが、いつの日か栄光のダイブを見ることができるのか。その日が来ることを一番確信したのは、上原自身に違いない。(文・高桑均)
奇跡のイーグルを狙ったボールは、無情にも池に消えたかに見えた。わずかに救われ、池のほとりに落ちたボールはスタンスが取れない。靴を脱ぎ、ゴルフパンツをヒザまで上げて池の中へ。そこから執念のパーセーブにつなげた上原彩子。惜しくもプレーオフ進出に3打届かなかったが、最終ホールで見せた意地のパーに観客は熱狂した。
【関連写真】美しきポピーズ・ポンド
1977年に樋口久子が「全米女子プロ」を制してから41年。日本人女子による2度目のメジャー制覇が見えた「ANAインスピレーション」。初日から3日間アンダーパーを重ね、最終日も4バーディ・1ボギーの「69」。トータル12アンダーの8位で大会を終えた。一時は首位に並ぶなど、し烈な優勝争いを演じた上原。笑顔を見せたが、内心はどのように思っているのだろう。
昨年の夏から本格的なスイング改造と意識改革に取り組んだ。米ツアーでも活躍し、昨年7月から上原を見るテッド・オーコーチがいう。「本気で勝ちたいなら飛距離は絶対に必要。ツアーでは、飛距離がアドバンテージといわれたのは昔。今は飛ぶのが当たり前になっている」。厳しい言葉を浴びた上原はこのオフ、新生・上原に姿を変えるべく、すべての改善に着手。飛距離は伸び、生命線の正確なショット、小技もさらに磨きをかけた。先週行われた「キア・クラシック」では順位こそ33位タイながら、4日間アンダーパーを並べメジャー入りした。
最終日は世界ナンバー1のフォン・シャンシャン(中国)とのラウンド。シャンシャンでさえ苦戦する難コース相手に、上原は果敢に立ち向かった。体格では大きく劣る上原だが、幾度もシャンシャンをアウトドライブ。この日「74」をたたいたシャンシャンをスコアでも圧倒し、大幅チェンジの成果を見せつけた。「あとは運も問題。勝つためには運も必要なので」。裏を返せば、それだけプレーの内容には満足しているということだ。
技術、飛距離への自信が増したことで、意識も変化した。「勝てないことはない」。4日間、上原がいい続けた言葉が印象的だった。「このコースでここまでできるのだから、どこにいっても勝てる力がついた」と、コーチのオーも太鼓判を押す。「シーズンはじめのメジャーでここまでできた。今年が楽しみです」。悔しさを押し殺して、上原は柔らかな笑みを浮かべた。
「同じ18番でも今日とは違う池に入りたいですね」。優勝者が18番の池に飛び込むのが恒例となっている本大会。日没のため明日に持ち越されたプレーオフに残ることは叶わず、通称ポピーズ・ポンドへの飛び込みはお預けとなってしまったが、いつの日か栄光のダイブを見ることができるのか。その日が来ることを一番確信したのは、上原自身に違いない。(文・高桑均)