<AIG女子オープン 事前情報◇9日◇ウォルトン・ヒースGC(イングランド)◇6881ヤード・パー72>
美しい花には、やはり“トゲ”がある? 今年の全英女子では、紫色の見た目にはかわいい花たちが選手を苦しめそうだ。
今回の会場となるウォルトン・ヒースGCのラフを見ると、鮮やかな“花畑”が随所に目に入ってくる。この正体は『ヘザー』というツツジ科の植物で、英国のコースではわりと一般的に見られるもの。夏に咲き、コースに彩りも与えている。ただしその茎は硬く、手で触るとまるで木の枝といってもいい感触だ。それが密集しているため、ボールが入ったらひとたまりもない。
開幕前日のプロアマに出場した渋野は、「お花畑だから、あまり踏みたくはないんですけど…きょうも一回入ってすごく手こずった。入らないようにしないと」とその警戒心をあらわにする。この日のラウンド中、ヘザーのなかに飛び込んだボールを打ち出したのだが、ユーティリティを握りスイングすると、「パーンって左に引っかけて、またお花畑に入った」というミスにもつながった。
「ユーティリティを持つことができたので意外といいライだったのに、引っかかってどこかに行っちゃいました。忙しかった(笑)」。本番で根っこ近くに入ったら、さあ大変。「アンプレヤブルだったり、短いウェッジを持たないと出ない」という、実質1ペナゾーンになる。
もちろん、これを警戒するのは他の選手も同じ。悲願のメジャー初優勝を目指す畑岡奈紗も、「あのタイプの紫の花は初めて。そこに入れないマネジメントをしないといけない。(出るかは)もう運ですね」と最も警戒する場所。古江彩佳も「かわいくないですね」とポツリとこぼす。やはり「横に出すだけか、ライによってはアンプレヤブルになるかな」と、同じ感想を持つ。
普段、海外でプレーする選手がそんな話をするくらいだから、余計に馴染みのない日本ツアー勢にとってはなおさら。「ちょっと曲げた時のブッシュというか、この花が特徴的」(木村彩子)、「日本にはない長いラフや紫の花に気をつけないと」(岩井千怜)と、真っ先にここを挙げた選手も少なくない。火曜日に雨が降った影響で、地面やグリーンの硬さはそれほどでもないが、かなりの範囲に“お花畑”が広がっているためティショットの難易度は“増し増し”と言える。
「(クラブをボールに)当てるのも難しい。グリーン周りにも多いし嫌ですね」(勝みなみ)と、選手たちの警戒の言葉は止まらず、とにかくここに入れないようなマネジメントが求められる。「すごく幹が硬くて、それに引っかかった時があって。ズボって入ってクラブが抜けなかった」(馬場咲希)と、実際の“被害”も出ている。
ヘザーというのは『荒れ地』を意味し、紫色のものには“頼もしい”という花言葉が与えられている。これを回避するためには、とにかくフェアウェイをキープし続けるか、ラフに打ち込んでも運よくそこを外れるかしかない。有効的にバンカーも絡んでくるため、ティイングエリアでのプレッシャーは大きく、ひとつのミスが大ケガにもつながる。そんな“かわいい大敵”に脇目もふれず、スイスイとコースを歩く“頼もしい”日本選手であふれてもらいたい。(文・間宮輝憲)