日々、好成績を残すため技術やクラブなどに対し、プロゴルファーが徹底的にこだわるのは当然の話。その中には、試合中は決して目立つものではないが、選手がさまざまな想いを込めているものもある。それがボールのオウンネームだ。今回は米国女子ツアーを主戦場にする選手に、その“こだわり”について2月に行われた「ホンダLPGAタイランド」の会場で聞いてみた。
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西村優菜は、『YUNA』という名前が記され、その後ろに赤と青の星マークをデザインしたボールを使用。「好きなマークなので入れてもらいました」というこの星こそ、こだわっている部分だ。色が赤と青の2色なのにも、意味がある。本人が明かす。
「最初にオウンネームを考えた時が、(キャロウェイがボールの)トリプルトラックを出したタイミングだったので、それに合わせた色の星をつけてもらいました」
西村はキャロウェイの『クロムツアーX トリプルトラック』を使用しているが、このシリーズの特徴といえば、青・赤・青の3本線がボールにデザインされていること。ターゲットに対して真っすぐヘッドをセットしやすくするための線の色と、星の配色を合わせることで、全体に統一感が生み出されている。
ちなみに、当初は名前を星マークで挟んでいたというが、現在は後ろに2つ並べる形に。そんなマイナ―チェンジこそあれど、もう3年ほどはこのデザインのボールでプレーしている。「他にいい案があれば変えようかなとも思ってるんですけど」と“イメチェン”も頭にはあるが、自分のなかですっかり定着した“優菜スタイル”になっている。
続いて聞いたのが、古江彩佳。すると、ここにも“深いこだわり”が。古江のボールには、まずは大好きなピンク色の筆記体で『Ayaka』という名前が書かれている。そして、その横には青、水色、ピンク、オレンジ、緑、黄緑、紫の七色の星が描かれている。ここをよーく見てみると手描きなのも分かる。これについて聞いてみると…。
「(7つの星は)全部お父さんに書いてもらっています。一回プリントにしようかという話も出たんですけど、そこはこだわりで。“お父さんの想いを乗せて欲しい”と思ってお願いしました」
実はこれ、コーチでもある父・芳浩さんが、1つ1つ、手で描いていった星マークだった。ちなみに、なんで7つ星かというと、「なんでだろう。ラッキー7ってことですかね?」といってニッコリだ。契約先のブリヂストンからボールが届けられると、娘が米国に行くまでに、すべてのボールにこれを記していくのだとか。思わぬところで、“親子の絆”を感じることができた。もちろん、「他の選手のボールと見分ける時の目印になります」と“実用性”もバッチリだ。
古江のボールといえば、『27』という数字が記されているのもおなじみ。これは、古江の誕生日(5月27日)の日にちと、パー36のハーフで、すべてバーディを取るとスコアが“27”になるから、という2つの意味がある。父子の想いを乗せたボールが、あの正確無比なショットの源にあった。
ただ、なかにはこんなケースも。渋野日向子は、ネームが今年から『@pinacoooon』になったのだが、そのこだわりを聞いてみると…。「ないです(笑)。インスタグラムのアカウントを乗せただけで」と、サッパリした答えが返ってきた。先週、中国で行われた「ブルーベイLPGA」で、米ツアー2勝目を挙げた竹田麗央のボールも、ピンクの文字で『RIO』とだけ書かれたシンプルなものだった。
西村がニコニコしながら、「みんなの(ボールを)見てみるとおもしろいですよね。馬場咲希は“てばさき”って書いてあるし、めっちゃおもしろい! てばさきボール欲しいです」と教えてくれたように、プロゴルファーが使用する小さなボールは個性であふれている。他の選手は、どこにこだわってる? …さらにそんな話を聞いていきたいと思う取材になった。