<AIG女子オープン 事前情報◇9日◇ウォルトン・ヒースGC(イングランド)◇6881ヤード・パー72>
今年の全英女子の会場はロンドンにほど近い内陸にあるコース。木が少なく開けている景色という意味では“リンクスっぽさ”はあるが、やはりいつもとは雰囲気が異なる。それでも日本ツアーの選手にとっては、普段戦っているフィールドとは芝質も異なり、慣れるまでの違和感は拭えない。それもありクラブを工夫して、本戦に挑む選手の声も会場では聞こえてくる。
今年6月の「宮里藍 サントリーレディス」で出場権を手にした木村彩子もそのひとり。初の海外試合で、「トップ10に入りたい」という目標を掲げて渡英した。全英が決まった後から日本よりも硬い地面を警戒。さらにグリーン周りの対策もあり、52度と58度を入れているウェッジを新たにコブラの『SNAKEBITE』(SB)に替えて臨む。
もともと、全英に持っていくウェッジ探しをするなかで、指導を受ける南秀樹コーチが打っていた新作に興味をひかれた。「フェースを開いた時に、バンスが当たらないものを探していたら、たまたま打っているのを見かけて。『めちゃくちゃいい!』ってなって持ってきました。くぼんだバンスが特徴で、抜けがいいです」。先週、初めてテストし“一目ぼれ”。「北海道に似ているかな」というコースで、練習ラウンドでも何度も感覚を確かめていた。
山下美夢有は「いままでのリンクスとの全英とは違った感じですが、グリーンが難しかった。グリーンが大きいですね」と、その印象を話す。火曜日に降り続いた雨の影響で開幕前日まで重い印象になったコースは、もともと6881ヤードと距離が長い。本番に入ってもランが思ったように出なければ、セカンドの距離が残り、さらにピンが奥に切られた日などはロングパットが残るシーンも多く見かけそうだ。
そこで山下は英国に持ち込んだ3本のパターを練習ラウンドなどで試しながら、開幕ギリギリまで迷うつもり。先月フランスで行われた「エビアン選手権」では、クリーブランドの大型マレット『フロントライン エリート RHO』を投入したが、今回は何がグリーン上で握られているのか? ここもコースとの“駆け引き”になりそう。
こちらは“全英対策”というわけではないが、エビアンでの反省を生かそうとしているのが西郷真央。フランスから帰国した途端に今大会への出場権が下りてきたため、再び渡欧とバタバタしたが、日本に戻っていた5日間でクラブを見直した。
まずウェッジは、もともと50度を投入していたものを48度に変更。さらに58度のウェッジをローバンスに替え、4番ユーティリティのロフト角を1度立てた。その狙いについて西郷は、「エビアンで中途半端な距離が残ることが多く、そういうホールではフェアウェイから打ってもボギーになってしまった。バーディチャンスにつけられなかったことも多く、まずはミスをクラブで補えないかと考えました」と答えた。もともと飛距離自体も伸びていることもあり、ここで一度見直した形だ。
もちろん吉田優利や岩井明愛、千怜らのように、ずっと日本で戦ってきた手になじんだクラブをそのまま持つ選手も多い。それぞれのバッグには、メジャーに臨む選手たちの判断もうかがえる。(文・間宮輝憲)