<全米女子オープン 初日◇30日◇ランカスターCC(ペンシルベニア州)◇6583ヤード・パー70>
初めて全米舞台に挑んだ2015年大会が行われたランカスターCCに、9年ぶりに戻ってきた鈴木愛。「緊張はあまりしていなかったけれど、ちょっと地に足がついていなくて不安」という日本では感じたことのない気持ちを抱えたまま、6度目のスタートを切った。
だが、そんな予感は悪い形でプレーにあらわれてしまう。スタートの10番パー4でセミラフからの2打目でショートサイドとなるグリーン左のバンカーに入れると、その後のアプローチも10メートルと寄らず、3パットのダブルボギーを叩いてしまう。さらに11番もボギーと、苦しい立ち上がりだった。
そこからはパーを並べ、呼吸を整えることはできたが、「チャンスについても下りの速くて曲がるラインばかりで、決め切れない展開が続きました」と、バーディもなかなかやってこない。すると折り返し直後の1番でスコアを落とし、一時は4オーバーまで沈んでいった。
そんななか「気持ち的に落ち着いた」と話すのが、3番パー4でのバーディだった。ここは「ようやく曲がらない上りのラインについた」という、これまで以上のチャンス。「どうしても決めたい」。その気持ちで放った3メートルのパットが、カップに沈んだ。「ホッとしました」。この頃になると、その足はしっかりと“地面をつかんでいた”。
開幕前には「思い出がいっぱい」と話すほど、このコースは鈴木にとって“特別”な場所だ。もう9年前のできごとだが、ホールもすべて覚えているというほど。そして苦しいラウンドのなかで、その経験が生きた場面も多かった。
「この傾斜はこっちにつけたらいい、とかも分かる。アウトコースは短くて伸ばしやすいのも知っていたから、インで頑張って耐えて、後半にバーディを積み重ねられればと思っていた。3番も、右から傾斜が来ていて(上りになる)左手前がいいというのも分かっていた。コースを知らないとそこはできないし、出ていて良かったなと思いました」
実際に3番に続き6番パー3もバーディとし、終盤に2オーバー・22位タイまで順位を上げることができた。ショット、ショートゲーム、そしてパットと総合力が問われる舞台で、2日目はさらに感覚を合わせていきたい。「ラフから短いアプローチをするよりも、10~15メートルのパットを打つほうが絶対に寄る。慣れていないラフだからこそ、長くてもいいから、フェアウェイキープとパーオンをたくさんするだけ」。こんな正攻法こそが攻略法にもなる。
2アンダーで単独トップの笹生優花ら、初日を終えてアンダーパーはたった4人。鈴木と首位の差も、わずかに4打だ。それを聞くと、「そっか…難しすぎ(笑)」とコースについてひと笑い。ただその目は、はっきりと上位の背中を見ている。(文・間宮輝憲)