朝一から大勢のギャラリーがコースに詰めかけた。その声援を背にスタートダッシュを決めにかかったが、グリーンを外しボギー発進。「あまりプレッシャーのかからないゴルフができたらいいなと思っていた」というなかでいきなり出鼻をくじかれたが、そこからは粘りに粘った。

難解なグリーンを前に、得意の強気なパッティングは封印。ジャストタッチでと決めていたが、それでも前半はショートする場面が多く、表情は曇る。そんな暗雲立ちこめるなかで8番でピンに絡めるショットを放ちバーディ。続く9番のパー5でもスコアを伸ばした。

「ギアを上げられた。8、9番、11、12番で（バーディを）獲れて、『まだ行けるぞ！』と思った」と、折り返したあとも連続バーディで流れをつくった。13番ではアプローチを寄せきれずにボギーで一歩後退したが、続く14番でバウンスバック。その後はバーディを決められなかったが、なんとか多くの試合に出場できる目安の20位内で8日間を終えた。

長い道のりだった。「昨日ですべてが台無しになった感はあるけど、初日の81位スタートからここまで盛り返して、途中は一桁順位までいった。成長したかなと思ったぶん、昨日の（プレー）で自分を苦しめたし、たしかに一年間いろいろ試行錯誤したが、後悔はない」。山あり谷ありの2021年を象徴するかのような予選会だった。それでも、“目安”ギリギリの20位に終わり、最後は明るい笑顔でまずは通過を喜んだ。

20位タイには2人が並んだが、ファイナルラウンドの成績がいいほうの渋野が、予選会通過者の20番手に。「出られる試合にはぜんぶ出たい」と、米ツアーを主戦場とすることがこれで確定した。出場カテゴリーはかなり下位になるが、出場優先順位を入れ替える最初のリシャッフルまではほぼ出場できる見込み。加えて渋野は全5大メジャーにも出場可能というアドバンテージを持つ。「米ツアーで優勝したい」という目標に向け、ここからがまさにスタートとなる。

「夢舞台のスタートライン」と位置づけたこの8日間は、「忙しかった（笑）」とさまざまな経験をした。この苦しかった8日間を終えて一旦帰国。早ければ、来月下旬の試合から出場することになる。「準備をしながら家でゆっくりしたり、実家のワンちゃんと遊びたい」。スイング改造やコーチとの離別。信じる道を突き進むとかたくなに邁進した21年は、ひとまずハッピーエンドとなった。（文・高桑均）