「上だけをみてやりたい」。そう明るく話し、残り2日に入ったが、思わぬ落とし穴が待っていた。3目にはなんと前半4ホールで4つ落とし、その後も立て直しがきかずに「79」の大叩き。ワーストスコアでまさかの29位タイに後退。夢舞台への道に、一気にもやがかかった。この日は言葉を発することなくコースを後にした。

一夜明けた最終日、覚悟を決めた表情の渋野の姿が早朝の練習場にあった。グッと冷え込んだ最後の戦い。出だしでボギーを喫したが、必死に耐えて、前日の失速を取り戻そうと闘う渋野がいた。「日に日にプレッシャーで自分で自分を追い詰めてしまった」と振り返った予選会。そのプレッシャーに打ち勝って、最後はかなりの試合出場が見込める目安の20位を守り切った。

この20位タイというのはあくまでも目安だが、“スタート地点”に立てたのは間違いない。「少なからずチャンスはあると思う。そのチャンスを生かしていけるように強くなりたい。出られる試合で勝ちたい」。フル参戦が約束されたシードではないため出場可能数は未知数だが、この2年間の苦しみ、そして今回の“波瀾万丈”の予選会を思えば、米ツアーメンバーとして戦う来季は、きっとさらなるドラマが待ち受けているはずだ。

「昨日はすみませんでした」と取材に応じなかった7日目の行動を素直に謝った渋野。ツアーメンバーの証でもあるAA（オール・アクセス）と書かれたカードを受け取り無邪気に喜ぶ渋野。「自分が変わっていこうとしている自分についてきてくれる方がいて、応援してくれる方もいるので、ありがたいです」と感謝の言葉も忘れない渋野。遠回りをしてつかんだ米ツアー息の切符。渋野の新たな挑戦が、ようやくスタートを迎える。（文・高桑均）