原英莉花が来季、米国女子下部エプソン・ツアーへの参戦を表明した。来季出場権をかけた最終予選会(Qシリーズ)の第4ラウンドを終えて、トータル3オーバー・67位タイ。最終ラウンド進出ラインの65位タイに1打届かず、90ホールを回り切れないまま、2度目の挑戦が終わった。
原が米ツアー挑戦への意欲を初めて示したのは、2023年4月にスポット参戦した「ロッテ選手権」。「どこかでチャレンジしないといけない。それが今年かなと思う」と意気込み、2次予選からの出場も視野に入れていた。
Qシリーズは1次予選、2次予選、最終予選と3段階で構成されている。原は当初、2次までが免除される『世界ランキング75位以内』に入り、最終からの出場を目指していた。このときの世界ランクは133位で可能性は残されていたのだが、2次からの挑戦を視野に入れるということは大きな変化でもあった。
ところが、シーズン中盤に持病の椎間板ヘルニアが悪化。5月に手術を受け、8月に復帰したものの、不安を抱えた状態で戦い続けることになった。それでも10月の「日本女子オープン」で復活優勝。通算5勝目のうち3勝が公式戦という“メジャーハンター”が、2週間後に迫った2次予選会へ大きな弾みをつけた。
だが、2次予選で予想外の出来事が起こる。最終予選会への進出に向けてスコアを伸ばし、大きく順位を上げていた3日目。スコア誤記によりまさかの失格となった。「最悪です。でも現実なので」。初めての予選会は思わぬ形で幕が下りた。
そして今年、2次予選18位で最終予選にコマを進めた。“1年遅れ”でたどり着いたアラバマの地。上位25位タイまでに与えられるツアーカード獲得を目指した。だが、初日に3つのダブルボギーなど「76」と大きく出遅れた。
「ここに向けてやってきたのに、スロースターターとはいえ初日にこんな…」と悔しさをにじませた。懸命に巻き返しを図ったが、最終ラウンド進出はかなわなかった。
「もどかしい。この順位は、自分の目標に対してすごく残念な結果。やるべきことをやった結果として受け止めています」
同時に、新たな挑戦を表明した。第4ラウンドを回り切ったことで、下部エプソン・ツアーの出場資格「カテゴリーC」を得た。「自分の(海外志向の)気持ちは動かない、って感じ。アメリカツアーに気持ちは向いている」。日本ツアーで世界ランキングを上げて、来年の最終予選会に再挑戦する選択肢もあるが、米国で戦う意志を固めた。
エプソン・ツアーは過酷な環境として知られる。整備が行き届いていないコースや限られたギャラリー。空港から遠いことも珍しくはなく、キャディを現地のローカルボランティアが務めることもある。試合数は今年19試合で、賞金ランキング1位の選手の金額は13万6025ドル(約2000万円)。原の今季獲得賞金は4022万4501円だった。日本ツアーは37試合のため単純に比較はできないが、遠征費の面でも、厳しい環境であることが分かる。
プロ1年目の馬場咲希は今年、エプソン・ツアーを主戦場にした。年間ポイントランキングは18位に終わり、レギュラーツアー昇格を逃した。「すごく大変だった。辛かった」と振り返る馬場の言葉が、このツアーの過酷さを物語る。
そんな過酷な環境にも「新鮮ですね。いつでも私、ルーキーの気持ちでいたいので」と力強い眼差しで前を向く。「馬場ちゃんでもここに(最終予選会)いる。それくらいレベルが高い。わたしもこのオフでしっかり鍛えて『なんだコイツ?』と思わせるような意気込みで行きます!」。
「自分が目指しているプレーに近づくための一歩だと思っています。また応援してくれたらうれしいです」。来年はプロ8年目。25歳の覚悟と挑戦を見守りたい。(文・笠井あかり)