独自の道を切り開き、プロゴルフの世界で戦っているひとりの選手がいる。26歳の女子プロゴルファー・識西諭里（おにし・ゆり）がその人だ。日本でのツアー生活を目指すも、これまでに7度挑戦したプロテストで合格をつかみ取れず、今年は米国、欧州と世界各国を股にかけて転戦を続けている。“未知の世界”に飛び込んで奮闘する姿を追う。先週はドイツで欧州女子ツアーの「アムンディ・ドイツ・マスターズ」に出場。4日間をトータル2アンダーで回り、25位タイで終えた。その後、今週の「ティップスポルト・チェコレディース」（23～25日）に出場するためチェコに移動したが、そこでドタバタ劇があったようで…。

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みなさん、こんにちは！　突然ですが…私はパターが万年ヘタクソなんです（泣）。ずっと大きな悩みの種になっていて、練習もかなりの時間を費やしています。テンポや振り幅、フェースがどうとか、傾斜がなんやらとか…。とにかくいろんな理論を学び、メソッドも試してきました。でもいっこうにうまくならない。パターってセンスの部分が大きいんでしょうか？　もちろんもっと必要なんだと思いますが、たまに『練習はウソをつかない』って言葉を聞いて、「ウソつかれてる…」とか思ってもしまいます…。それで先週の試合では、思い切ってひとつ大きな“チェンジ”に挑戦しました。

高校を卒業してからずっとクロスハンドだった握りを、順手にしてみたんです。スウェーデンでの男女混合大会（2週前）で男子プロと回った時に、タッチも素晴らしくて、外した時でも外し方が違うなということを目の当たりにして、なんとかしないとな、って。それで先週の練習日に順手を試してみたら、これが感覚的に良かったんです。もともと、なんでもあまり変えることに勇気がもてなかった私ですが、やっぱり試合に出続けられる環境にいられると『これを試そう』って思える。改めてずっと試合があることの大事さを痛感しています。順手についてはもう少し試してみて、結果をフィードバックしていきたいと思ってます。

さて、そして今週なんですが、いきなり“プチ事件”が起きました！（笑）

移動の時の話です。ドイツのベルリンからチェコのプラハは直行便がないので、最終日のラウンドが終わった後、ツアーが用意してくれたバス（代金はもちろんかかります）で現地に向かうことになったんです。ギリギリまで飛行機を探してもいい行き方が出てこなかったので、直前に申し込んでかろうじて乗れました。バスは選手のキャディバッグも一緒に運ぶためいつもパンパン。通路もギッシリと荷物で埋め尽くされている、というのは“おなじみの光景”です。そこで揺られること5時間…。時間で言うと夜の12時を過ぎたころついにプラハの空港に到着！　レンタカーをピックアップするため、ここで降りていく選手たちを見送りました。

私の目的地は、大会が用意してくれたオフィシャルホテルです。当初は母が来てくれるということだったので、エアビー（民泊サービス）を利用する予定だったのですが、急に体調不良になり帰国することに。そこで急きょ2つあるオフィシャルホテルのうちの1つに泊まることになったんです。本当に突然の変更だったのですが、『コースまで送迎もあるし、いっか』なんて思ってたんです…。この空港までは。

降りた選手が下車しドアが閉まると、バスは動き始めます。すると本当に少し走ったところで、ふと外を見ると…。私が泊まるホテルの名前が目に入ってきたんです！ 『えっ？』って心境。そうなんです、私の宿泊先は空港のすぐ近くだったんです！！　大いなる勘違い。私もここで降りないといけなかったんです！！　その事実に気づいて焦る気持ちとは裏腹に、ホテルはどんどん遠ざかっていきます。

「あー、やっちゃった…」。一応、確認のためにファクトシートを見てみると、やっぱり空港の近くだったようで…。そして、さらに泣きそうになる一文を発見することになってしまいました。私が泊まるほうのオフィシャルホテルには、送迎がなかったんです。もうレンタカーはキャンセルしています。そしてレンタカーを借りるのは、空港です。。 『オフィシャルホテルには送迎がある』っていう思い込みで、この一文を見逃していたんです…。

これは完全に自分の責任…。『なんで見逃したの～』って自分を責めました。そんなこんなで、そこから30分。ようやくバスが“目的地”のホテルに到着しちゃいました。運転手さんに空港に戻る予定があるかと聞いても、答えは『No』。協会も同じです。ものすごい田舎でバスを降りることになってしまいました。Uber（配車アプリ）で15分後くらいに車が来てくれたのは不幸中の幸いでしたが、本当に一瞬途方に暮れかけました。無事ホテルに着いたのは深夜1時30分頃。ベッドに飛び込み、“即落ち”でした。

『海外で思い込みは危険』ということを、身をもって経験させてもらいました。『ファクトシートは大事！』って心に刻まないと！　特にいきなりいくつも変更が起こった今回みたいな時は、余計に気をつけないといけないですね。ただ、こっちではたまにこういう“珍道中”が起こるので、たくましさはついてきました…？（笑）。あと、ゴルフをやってきたおかげで、普通ならできない経験もできて、いろいろと成長させてもらってるな～って思うようにもなれました（笑）。あ、次の日には無事レンタカーも借りられたので、ご安心を！　ここまでドタバタ続きだったので、試合ではたっくさんいいことが起こりますよ～に！

■識西諭里（おにし・ゆり）
1997年4月16日、福岡県出身、26歳。福岡第一高卒。9歳でゴルフを始め、2015年の福岡県民アマチュアゴルフ選手権優勝などの実績を残す。昨年は予選会を突破し6月の「全米女子オープン」に出場。米国、欧州ツアーの予選会にも挑戦し、現在は欧州を主戦場にしている。身長166センチ。株式会社梅の花所属。