11月10~12日(競技は11~12日の2日間)に、障害者ゴルファーの日本一決定戦「日本障害者オープンゴルフ選手権」が麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県)で開催された。同大会は2021年からWR4GD世界障害者ゴルフランキング対象となっており、WR4GDパス(世界ランキングパス)を持つ選手にはポイントが反映される。
同大会は障害別に上肢障害の部、下肢障害の部、片マヒの部、重複障害の部、車いすの部、知的障害の部など10部門がある。その中で公式ハンデ15以下の上級者が集まるグランプリ部門では、右足が義足のプロゴルファー・吉田隼人がトータル6オーバーで大会4勝目を飾った。
今年で29回目を迎えたこの大会。日本障害者ゴルフ協会(DGA)の代表理事・松田治子氏(以下、松田代表理事)は「今年も開催できたことを大変うれしく思います」と喜びを語る一方で、開催の裏にある課題にも触れた。
■大会開催には難題も…「地道に続けること、継続は力、当たり前の言葉」
第1回大会は1996年11月26日に栃木県のウイングフィールドゴルフ倶楽部(現・パインズ日光ゴルフ倶楽部)で行われ、33人が全国から集まった。当時はアマチュア中心で競技志向の大会ではなかったが、現在はグランプリ部門ができ、JGA協議員も参加するなど競技性が高まっている。いまでは70名を定員とするなど、参加者数が増えている。
しかし、初期のころは障害者ゴルフへの理解が進まず、ゴルフ場の確保が難しかった。「日曜日の午後しか貸し切れない」状況の中、多くのゴルフ場に交渉し続けてきた。それでも、「絶対に続けるんだっていう意思は持っていた」と根気強くゴルフ場にオファーを出し、ここまで開催してきた。
「障害者の団体は少ない。私たちが辞めてしまうと(大会が)途絶えてしまいます。とにかく地道に続けること。『継続は力』。当たり前の言葉ですが、大事だと思っています」。松田代表理事の強い想いと、その気持ちに賛同するゴルフ場の協力があって大会が継続できている。
■日本障害者ゴルフ協会はNPO法人 ボランティアで支えられる運営と資金の課題
日本障害者ゴルフ協会はNPO法人として運営され、大会運営は主にボランティア活動で支えられている。交通費などの経費は支給されるが、スタッフは基本的に無給で業務をしている。
「ボランティア精神にあふれている人たちが協力してくれている。なんとかその人たちに小額でもいいから給料を払いたいと思っていて、ようやく少額ではありますが、3人ぐらいに給料が払えるようになりました」と、松田代表理事は話す。
しかし、資金面での課題は多い。「寄付金の多くは競技や遠征に充てられ、運営スタッフや事務局の活動費には十分に回りません。そうなると、運営がかなり厳しいのです」と苦しい現状を明かした。
さらに、障害者スポーツの認知度の低さにも苦言を呈する。「パラリンピックも(開催中は)騒がれていますが、終われば忘れられてしまう。これがパラスポーツの現状だと感じています」。
■課題解決に向けて広げるべき認知度
大会の開催が続けられていることは、障害者ゴルフにとって大きな意義を持つ。その一方で、競技の認知度が低く、国からの寄付金が思うように集まらない現状がある。その結果、運営に協力してくれる人々への対価を支払うことができず、松田代表理事は頭を抱えている。
それでも、協力してくれる方々に感謝しながら「大会を通じて障害者ゴルフの認知度を高めることが課題解決につながる」と強調する。
多くの難題を抱える中でも、松田代表理事と関係者たちは未来を見据えている。“継続は力”という信念を胸に、これからも日本障害者オープンゴルフ選手権を開催し続ける。(文・高木彩音)