<オーガスタナショナル女子アマチュア(決勝) 最終日◇1日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇ 6310ヤード・パー72>
馬場咲希(代々木高3年)が最終ホールのグリーンに上がってくるとき、グリーン奥にいた父親の哲也さんは娘に向かって両手を大きく振っていた。「口角を上げてほしかった」という父の思いは「全然気づかなかった(笑)」と娘には届かず。キャディを務めた進藤大典氏のみがそれに応えた。
馬場咲希がオーガスタで学んだ「最後まで諦めない大切さ」 最終ホールでは「さみしさ」も
馬場咲希が初めてのオーガスタでのプレーを終えて感じたことは?
配信日時:2023年4月2日 23時30分
<オーガスタナショナル女子アマチュア(決勝) 最終日◇1日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇ 6310ヤード・パー72>
馬場咲希(代々木高3年)が最終ホールのグリーンに上がってくるとき、グリーン奥にいた父親の哲也さんは娘に向かって両手を大きく振っていた。「口角を上げてほしかった」という父の思いは「全然気づかなかった(笑)」と娘には届かず。キャディを務めた進藤大典氏のみがそれに応えた。
初めてのオーガスタで、馬場は臆することなく堂々とプレーした。トータルイーブンパー・14位タイで最終日をスタートすると、上位の選手がスコアを伸ばしあぐねるなか、果敢にピンを狙い続け「すごいいいリズムで回れた」と、前半のインコースで4バーディ・ボギーフリーの「32」をマーク。トップとはまだ差が離れていたが、トータル4アンダーとして2位や3位が狙える位置で折り返す。
しかし、オーガスタの魔女は後半に入って試練を与える。335ヤードの3番パー4、ドライバーでフェアウェイセンターに運び、セカンドは幅10ヤードほどの一番奥に切られたピンに突っ込んでいったが、わずかにグリーン奥にこぼれる。グリーンに向かって打ち上げていく、ピンサイドの難しいアプローチはフワッと上手く寄せるも、1メートルのパーパットを外して初めてのボギーを叩いてしまった。
続く4番パー3のピン位置も左の一番奥。ティショットは「悪くないショットだったけど、風にちょっと流されてしまった」と、グリーン右奥へ外す。左足下がりの難しいアプローチは、「地面が硬くてダフってしまった」とショート。グリーンに届かなかった。
3打目の外から下りのパッティングは「うまく集中できずにカツンと打ってしまって」、1.5メートルオーバー。ボギーパットはしっかり強く打ったが、カップのフチに当たって跳ねて入らず。ダブルボギーとして2ホールで3つ落とした。ここで雷雲接近のホーンが鳴り響き、競技は中断。馬場を含めた選手たちはコースから引き上げていった。
「前半が良かったぶん、後半崩してしまったショックが大きくて、中断後の最初の10分くらいは何も話したくなかった」と失意のどん底にいた。ここでキャビンで座って待機していた馬場に睡魔が襲う。「だんだん眠くなってきちゃって寝ました(笑)。まじで爆睡。いつ寝たのかも覚えてない(笑)」。約2時間の睡眠で「あーよく寝た!って感じで、自分的には忘れられて良かったです」とメンタルが復活。しっかり切り替えて残り5ホールをプレーできるはず…だった。
再開後の5番をパーとして迎えた6番パー3。ティショットをグリーンの左に落とし、またしてもピンサイドの難しいアプローチが残った。この2打目はフワッと上げてグリーンに乗せたものの4メートルショート。2パットのボギーとして「前半の貯金を使い果たしちゃった」と、スタート時点のトータルイーブンパーに戻ってしまった。
心が折れかけていたが馬場に再びスイッチが入る。「せっかくオーガスタでプレーできているから、最後まで諦めずに頑張ろう」。右手前にピンが切られた7番パー4では、残り58ヤードの2打目を奥から傾斜で戻して1.5メートルにつけてバウンスバック。続く8番パー5では2打目でグリーンのそばまで運び、残り30ヤードの3打目をスピンをきかせて1メートル弱に寄せ、連続バーディとした。
最終9番パー4では、セカンドショットをピンと同じ段の左奥3メートルに乗せ、3連続バーディの期待が高まった。冒頭の父の大きな腕振りに気づかなかった馬場は、ギャラリーの拍手に迎えられながらグリーンに上がり、「すごく最高の感じでした。残り1ホール、グリーン上で終わっちゃうのがすごいさみしくて、もう終わっちゃうのかって感じ」と切ない気分に浸っていた。
最後の1打になるのを何かが嫌がったのか、このバーディパットは外れ、返しを入れてパーでフィニッシュ。初めてのオーガスタは「70」で2アンダーだった。オーガスタでの決勝ラウンドに進んだ31人のうち、アンダーパーはわずかに3人で馬場の「70」はベストスコアタイ。大舞台で5位タイとしっかり結果を残した。「最後まで諦めないことを改めて大切に感じた。最後の3ホールはうまく切り替えてバーディ2つ獲れたので、諦めなくて良かったです」と語る。
4月から高校3年生になる馬場。今年のプロテストに合格すれば、もうこの大会に戻ってくることはない。「オーガスタをラウンドできるのは一生に一度かもしれないので、ビビらず思い切ってピンを狙いました。オーガスタはすっごく広々としていてきれいで、ここでプレーできて良かったです」。リズムよくバーディを重ねた前半、難しいアプローチから耐える展開となった後半、中断と睡眠を経て息を吹き返した上がり3ホールと、思い出に残る18ホールとなった。
馬場はこのまま現地に残って「マスターズ」を観戦する予定。その翌週も帰国せずに米国内で調整を続け、海外メジャー今季第一戦「シェブロン選手権」(テキサス州・4月20~23日)に出場する。「このあと2週間空くので、ショットの調子をしっかり改善して、シェブロンに向けて調整したいと思います」。オーガスタの余韻に浸り、マスターたちのプレーに刺激を受けながらメジャーに備える。(文・下村耕平)
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