11月10~12日(競技は11~12日の2日間)に、障害者ゴルファーの日本一決定戦「日本障害者オープンゴルフ選手権」が麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県)で開催された。
大会初日には、クラブメーカーのブリヂストンゴルフが出場選手を対象にレッスンやクラブフィッティングを実施。18ホールをラウンドした後にもかかわらず、多くの選手が集まって盛況を見せた。同社担当者に、イベント開催の背景や想いについて話を聞いた。
■障害者ゴルファー支援への想い
「2年前に障害者ゴルフと出会い、トーナメントはなくなってしまいましたが、支援は行いたいと思っていました」
同社が障害者ゴルフと出会ったのは、2022年に行われた国内男子ツアー「ASO飯塚チャレンジドゴルフ」だった。同大会のプロアマ戦は、障害者ゴルファーがプロとともにラウンドする3人1組の形式で行われていた。2年間続いたこの大会が今年は開催されなかったことを受け、今回の「日本障害者オープン」でのサポートが実現した。
「クラブメーカーは物を作って売るイメージだと思いますが、最近はこうしてサービスやソリューションにも注力しています。“ただ物を売るだけではない”という思いでやってきた中で、障害者ゴルファーの方々に感銘を受けた。松田理事(日本障害者ゴルフ協会(DGA)の代表理事・松田治子氏)と相談しながら、今回のイベントを実現できました」
■イベントで実感した“コミュニケーション”の大切さ
レッスン担当者は、一人ひとりの選手と時間をかけて課題をヒアリングし、それぞれの障害に合わせた動きを確認していた。
「選手の皆さんは、私たち以上に多くの工夫を重ねて今のプレースタイルにたどり着いています。その中で、できること・できないことを正確に把握するため、問診に時間をかけました。例えば、右足に義足をされている方に『右足で踏ん張る』という表現はそのままでは伝わりません。お互いに話し合いながら探ることが大切だと感じました」
フィッティング担当者は「お客様のスイングを個性として捉えています。健常者も障害者も行うことは変わりません。フィッティングは人よりもクラブの動きを見て、最適な状態を目指します。一番大事なのはお客様の笑顔。ゴルフを楽しんでいただきたい気持ちで行っています」と、改めてコミュニケーションの重要性を実感していた。
■パラリンピックのメダリスト・山本篤選手がフィッティングを実施
片大腿切断の義足アスリートで、リオパラリンピックの走り幅跳びで銀メダル、4人×100mリレーで銅メダルを獲得した山本篤氏がフィッティングを受けていた。「なんかいいですよね。新しい感覚を知ることができて良かった。今使っているクラブが最適かどうか分からなかったけど、フィッティングを受けてデータを教えてもらえれば、より良い選択ができるかもしれない」と満足した様子だった。
日没間際になっても、練習場に残っている選手たちが多く、終始イベントを楽しんでいる姿が印象的だった。ブリヂストンゴルフは、これからも障害者ゴルファーがより充実したゴルフライフを送れるように活動を続けていく。(文・高木彩音)