<JLPGA ファイナルQT 最終日◇29日◇葛城ゴルフ倶楽部 宇刈コース(静岡県)◇6454ヤード・パー72>
前回、シードを喪失して参加した2021年以来のQT出場となった永井花奈が、ツアー優勝経験者としての実力を見せつけた。見事1位でレギュラーツアーに返り咲き。来年も通算2勝目を目指すことができる。
前日に続き風速6.5メートル/秒の強風が吹き、体の芯まで冷え込むような寒さ。青のダウンジャケットを着用しながらのプレーで、ラウンド後に開口一番出てきたのは「疲れました。早く帰りたい」という言葉だった。タフなコンディション。それでも「72」のパープレーで乗り切り、前日に奪った首位の座を守りきった。
このQTでは優勝が存在せず、来季のレギュラーツアー前半戦出場権が得られれば、それでいい。永井が意識したのは「チャンスが来たら伸ばしたい」。傾斜が強い葛城のグリーンでは、ピン奥につくと難度も増す。そこは計算しながらも、まずはグリーンに乗せてパーを拾うことが大事になった。
もちろん、それが可能になったのは前日までにトータル7アンダーまで伸ばしていたことが大きい。「これだけ(スコアに余裕が)あったので楽にできました。下のことも考えなかったです」。“貯金”を生かしてセーフティに。長年シード選手としてプレーしてきた経験は、こういう部分でも生きてくる。
「もちろんQTに来ることは楽しいものじゃないけど…」。こう前置きはするが、今回は“気持ちの余裕”がいい方向に物事を運んでいる。プロ2年目の2017年に初めてシードを手にしたが、統合された20-21年シーズンに一度、手放した。「シードを保持しないと…」。その時はこんな考えも頭を巡っていたが、今は「一回シードを落としてから、考えないようにしています」と、そこに執着せず、いい意味で肩の力を抜いている。「いい状態でその試合を楽しみたい」。これが今のテーマだ。
「伸ばしていかないと順位が落ちていく時代」という認識はあるが、「攻めすぎて自分を追い込んでいました」ということを、このQTの4日間で改めて確認することもできた。その結果、連日、強風が吹いた葛城でスコアを伸ばすことにも成功。「気楽に」。今回と同じ葛城GC宇刈Cで行われた21年のQTは41位と苦しんだが、今回はトップ通過だ。心境の違いが結果として現れた。
ここ数年の悩みは、春先になかなか調子が上がらないこと。オフには海外での合宿なども検討中で、しっかりと体を動かしていく。「最終的な目標は優勝ですけど、まずは優勝争いを増やしていきたい」。来年はスタートダッシュに成功し、シード復帰、そして2017年の「樋口久子 三菱電機レディス」以来となる勝利をつかみとりたい。(文・間宮輝憲)