<JLPGA新人戦 加賀電子カップ 2日目◇5日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6589ヤード・パー72>
打った瞬間、「やばいなぁ」。荒木優奈は池ポチャが頭によぎった。新人戦の舞台は国内女子ツアー「伊藤園レディス」でおなじみのグレートアイランドC。グリーンの左サイドに池が広がる名物ホールの17番パー3(197ヤード)は、この日はグリーン左奥にピンが切られていた。
4番ユーティリティでグリーンの真ん中を狙ったティショットは、「直線的にピンの方に飛んで行って…」。グリーンと池の境目に飛ぶボールの行方をドキドキしながら見送ると、ギリギリでグリーンをキャッチ。ピンの左奥2メートルについた。これを沈めてトータル11アンダー。2位に3打差をつけて単独首位で最終日を迎える。
この日荒木が「やばい」と思ったのは、この時だけ。「(今週)やっとパットが入り始めて、ショットとパットがうまくかみ合った」とあぶなげない内容で7バーディ、ボギーなしの「65」をマークした。「レギュラーツアーの会場でもあるし、こういうスコアはめっちゃ自信になりました」と声を弾ませる。
今週の荒木は終始にこやかだ。「プロテストとかQTが終わってゴルフが楽しくて。本当にゴルフ楽しいと思えています。ミスしてもキレずに穏やかに回れるのが、悪い方向に行かない理由でもあるのかな」とこの2日間はいい流れでプレーができている。
先週のQTが終わるまでは、ゴルフを楽しんできていなかったという。宮崎県・日章学園高校時代は、ナショナルチームのエース的存在で活躍をした。1発合格を目指して臨んだ昨年のプロテストは、体調不良もあって不合格に終わった。今年は地元・熊本県の玉名カントリークラブを拠点に腕を磨く傍ら、月に2~3回キャディバイトもしていた。レギュラーツアーの「資生堂レディス」で10位タイ、「大東建託・いい部屋ネットレディス」で9位とトップ10入りを経験して自信も深めた。そして2度目のプロテストは4位タイで合格を果たした。
プロテストが終わると2週後には来季の前半戦の出場権をかけたファーストQTが始まり、その翌週にはファイナルQTと続けて開催された。プロテストから1カ月は「ミスをすると、やばいっ、みたいにすぐなっていた」と少しのミスでメンタルが揺れていたという。
先週のファイナルQTは37位と前半戦の多くの試合に出場できる位置で終え、新人戦は楽しくゴルフができている。
ただ、プロゴルファーになったという実感はいまだに沸いていないとも。「マジで(合格前と)あんまり変わらなくて」。ゴルフ練習場では「荒木プロ」と声をかけられることもあるが、まだ慣れていない。「たぶんこれで賞金をもらえたら実感が沸くのかなと思います」。
今大会の優勝賞金は270万円で2位は135万円。「初任給は高ければたかいほどうれしいですから」。“テスト”の呪縛から解き放たれて、ゴルフを楽しみながら97期生ナンバー1のタイトルと誰よりも高い初任給をもらうつもりだ。