独自の道を切り開き、プロゴルフの世界で戦っているひとりの選手がいる。26歳の女子プロゴルファー・識西諭里(おにし・ゆり)がその人だ。日本でのツアー生活を目指すも、これまでに7度挑戦したプロテストで合格をつかみ取れず、今年は米国、欧州と世界各国を股にかけて転戦を続けている。“未知の世界”に飛び込んで奮闘する姿を追う。今週はインドに滞在し、19日開幕の「ヒーロー女子インディアンオープン」に出場する。
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みなさん、こんにちは! 私は今インドにいるのですが、驚かされることがいっぱいです…。まずは、とにかく運転が荒い!(笑)。だいたいの選手はホテルから出てる送迎車に乗ってコースに行っているのですが、その車中もスリル満点。急に人は出てくる、車も出てくる。“交通ルールって何だっけ?”という感じです。信号は多いけど機能してないし、謎に10車線以上ある道もありました。それでも、すぐにぶつかりそうなのに、意外とぶつからないのは不思議です。みなさん運転は“オラオラ”ですし、『インドで運転することは無理』って最初に言われた意味を理解しています。まさに“レべチ(レベルが違う)”で、これも日本では味わえないことだなと思っています。
先週は、三重県でプロテストの第2次予選(ジャパンクラシックCC クイーンC)を受けました。それにも少し触れさせてもらいます。腰痛を発症してしまい、ゴルフ人生で初めて棄権をすることになってしまいました。香港での試合が終わり、天候の兼ね合いもあって先々週の土曜日には帰国したのですが、あまり十分な準備もできなかったうえに、体の不具合が出てしまい、ポジティブにプレーすることはできませんでした。今は無理矢理にでも“仕方ない”と考えるようにして、気持ちを切り替えています。
同じ週に行われた男子の「日本オープン」では、岩崎亜久竜選手が優勝しましたが、そのできごとにはすごく共感できることが多かったです。岩崎選手とは深く親交があるわけではないのですが、今年、ヨーロッパでプレーもして、8月の「ISPS HANDA・ワールド招待」(北アイルランド)で一緒の会場にいました。ただ、欧州ツアーで予選通過が3試合しかなかった、というのを日本オープン優勝後の報道で知りました。
そのコメントのなかには『試合に出られない時は、出られないだけのつらさ。希望とか自信が失われることはなかった。でも、今年は打ちのめされる感じで、しんどかった』というものがあって、それがすごく心に染みました…。試合に出ていることによる苦しみというのを私も感じ始めているので、すごく印象に残ります。体力ではない、“心が削られるつらさ”。それを乗り越えての優勝というのは、なおさら感動します。
私も心機一転、また頑張っていくしかありません。今週のコースも驚かされることのひとつなんです。DPワールドツアーでも使用されているらしく、川村(昌弘)さんから『インコースがやばいよ』と言われていたのですが、納得です。アウトコースはただキレイなコースなのですが、バックナインは“やばい”です。
55ヤードくらいのグリーン、大きな傾斜がいーっぱいあったり、名物ホールの17番は300ヤードほどの短いパー4なんですけど、セカンドからピンが見えない超打ち上げ。ただそれだけではなく、グリーン周りは池で、ゴツゴツとした岩があったりするんです。18番も一見2オンが狙えそうなパー5なんですけど、いいところにティショットを打つと、目の前が木でさえぎられて打てない。刻もうにもフェアウェイが見えません…。そんな“クセ強コース”では、現地で強烈な売り込みに負けて担いでもらうことになった“クセ強キャディさん”とタッグを組みます。インドは…まだまだ何か起こりそうな予感がします!(笑)
■識西諭里(おにし・ゆり)
1997年4月16日、福岡県出身、26歳。福岡第一高卒。9歳でゴルフを始め、2015年の福岡県民アマチュアゴルフ選手権優勝などの実績を残す。昨年は予選会を突破し6月の「全米女子オープン」に出場。米国、欧州ツアーの予選会にも挑戦し、現在は欧州を主戦場にしている。身長166センチ。株式会社梅の花所属。