<セントラル・フロリダ選手権 最終日◇2日◇ウィンターヘイブンCC(米フロリダ州)◇6572ヤード・パー72>
米女子下部エプソン・ツアーの2025年シーズンが始まった。開幕戦ながら派手な装飾はなく、ギャラリーロープもない。上がりホールには簡易的なVIPテントが張られていて関係者などが見守っているものの、日本ツアーのように18ホールを歩いて声援を送るファンはほとんどいない。ここが原英莉花の今季の主戦場。雰囲気に戸惑いは少なかったというが、「毎試合がQTっていう感覚です」と言った。
昨年12月の米最終予選会(Qシリーズ)で最終日進出を逃すと、そのラウンド終了直後ながら米下部参戦を明言し、すでに意志を固めた。ランキングトップ10に入れば上位カテゴリーで米ツアーに“昇格”することができることが、挑戦を決めた理由のひとつだが、過酷な環境を選んだのは、自分自身に変化を与えたかったからでもある。
「同じ環境、ずっと日本でやってきて、春先がダメで…っていう自分のパターンが見えてきちゃう。仕方がないとか諦めじゃないけれど、自分に求めるところがシビアじゃなくなってしまうのがすごくイヤだった。環境を変えて、もう一回、ゴルフに真剣に向き合いたいなと思ったのが一番です」
自他ともに認めるスロースターター。これまで挙げた日本5勝のうち、初優勝だった2019年「リゾートトラストレディス」以外の4勝は、すべて10月以降に飾ったもの。かねて「春は苦手」と話し、クラブやスイングに試行錯誤。夏から調子を上げていき、秋からのビッグトーナメントで優勝カップを掲げる。そんな強さを発揮できることも、大きく評価するべきことではあるのだが、本人としては物足りない。
「“それでいいじゃん”って思っちゃう部分もあった。何試合かポンポンって(上位に)いけば(日本の)シードを取れてしまう。そういうんじゃないなって。求めていきたい」
日本ツアーでは、今季得ていた単年シード権を放棄した。保持したまま米下部の試合に出場すると、日本のシード選手としての出場義務試合数などは免除されず、条件によって罰金が科せられる。見積ってみれば、合計1000万円以上になるという。「何しに仕事をしてるんだろう、っていうのもあるし、まずは集中して挑戦したかった」と説明する。
10月2日に開幕する最終戦「エプソン・ツアー選手権」(米カリフォルニア州・インディアンウェルズCC)でシーズンが決着する。全20試合と日本の36試合に比べて少なく、ランキング上位10人に入るためには、苦手な春の出遅れも、夏のつまづきも決して許されない。初戦は28位だった。「(今後の)日程を組む分にも、この3戦でここからの自分をラクにしてあげたい」と次週からのフロリダ連戦でばん回したい。日本ツアーへのスポット参戦も未定で、ランキング上位が当確してから、と考えている。
「(米生活は)普通に楽しいです(笑)。ファンのみなさんと会えなくなってしまうし、寂しい気もするけど、わたしがゴルフをするのは成長していきたいから。そこを求めて頑張りたい」。力強い眼差しとしっかりした足取りで、険しい道のりを歩き始めた。(文・笠井あかり)