独自の道を切り開き、プロゴルフの世界で戦っているひとりの選手がいる。26歳の女子プロゴルファー・識西諭里（おにし・ゆり）がその人だ。日本でのツアー生活を目指すも、これまでに7度挑戦したプロテストで合格をつかみ取れず、今年は米国、欧州と世界各国を股にかけて転戦を続けている。“未知の世界”に飛び込んで奮闘する姿を追う。先週はスウェーデンで男女混合大会「ボルボ・カー・スカンジナビアミックス」に出場するも予選落ち。今週はドイツに移り、15日から欧州女子ツアーの4日間大会「アムンディ・ドイツ・マスターズ」を戦う。

◇

みなさん、こんちには！ 私は今ドイツにいます。日曜日には現地に入って、月曜日から18ホールの練習ラウンドをするなどして調整してきました。先週はDPワールド（欧州男子）ツアーにも組み込まれている大きな試合に出ることができましたが、やっぱり規模感が同じ欧州でも女子ツアーとは違いました！ ゴルフ場もキレイだし、スタンドとかもすごい！ 音楽が流れるホールは大盛り上がりで、ギャラリーの数も多くて…。女子の大会も賞金が高いところは、それに比例してコースコンディションがよかったりするものですが、普段は感じることができない雰囲気を味わうことができました。

コースは狭く、難しく、結果は悔しいものになりましたが、そんな大会に出られたのはとても光栄でした。男子の選手よりもティが50～70ヤード前に出されてはいたのですが、結局3番ウッドやユーティリティで刻むことになるホールも多く、セカンドは男子と同じ位置から、という場面もたくさんあって…。男子はそこからしっかりとボールを止められるのですが、女子だとなかなか止められずという感じでした。フェアウェイの芝質も難しくて、キープしててもちょっと2打目を打つのが怖いという感情も湧いてきたり…。あと、男子の選手はパターが上手だな～って思わされたり、すごくいい勉強になった一週間でした。

コース外でも素晴らしい出会いのおかげで、楽しくまた勉強にもなる時間を過ごすことができたんです。欧州で活躍する川村昌弘さんと、久常涼くんと3日間くらい、夕食をご一緒する機会に恵まれたんですが、とにかくそれが楽しい時間でした！

川村さんが欧州で体験した“珍事件”をたくさんお話ししてくれたんですけど、それが面白くて。『南アフリカで拉致された話』とかを楽しそうに語るんです！（笑）。ずっと久常くんと2人で笑ってたんですけど、海外で起こったハプニングをすべてネタにしている感じがして、「長年海外で戦うには、こうやって考えられることも大事なのかな」ということを感じることができたのも、いい経験でしたね。…あ、でも危ない目には私は遭いたくないですけどね！（笑）。なんか、いい意味で“ゆる～い”お方でした（笑）。また、帯同キャディの恵さん（坂井恵さん）とのボケ・つっこみもバッチリで、相性がいいから長年タッグを組めるんだなって改めて感じることもできました。

でもゴルフの話になると真剣。男子だから技術やギアの話とかになると久常くんも含め、すごい知識が出てくるんです。ひとつの話題に対してディスカッションをしたり。質問しても、すごい深い答えが返ってきて。なんでも面白い話にするのが川村さんの“得意技”なんですけど、そういう真剣な話を聞けたのもすごく楽しかった。

特に、川村さんが連続で予選落ちした時も、あえて何もしなかったという話は印象的でした。私は2週連続で予選落ちしただけでも絶望して落ち込んだりもしたんですけど、『海外で何年やっていても予選落ちはするんだよ』って言われて、すごく楽になりました。「こんなに上手な人でも予選落ちするんだよな～」って思えたら気持ちが軽くなりました。次の日、私はスコアが悪いなかゴルフを楽しむことができたのも、その言葉のおかげです。

今週は先週とは打って変わって、広いコースでの試合になります。もちろん勝ちたいという気持ちは大事ですが、今まで以上にあまり自分を追い込み過ぎずに、結果のことは置いておいて、最後まで一打一打しっかり打つことを大事にプレーしていこうと思います！ 『また試合が近くであったら、一緒にご飯にいこうね』と言っていただいて…早くその機会が訪れますように！

■識西諭里（おにし・ゆり）
1997年4月16日、福岡県出身、26歳。福岡第一高卒。9歳でゴルフを始め、2015年の福岡県民アマチュアゴルフ選手権優勝などの実績を残す。昨年は予選会を突破し6月の「全米女子オープン」に出場。米国、欧州ツアーの予選会にも挑戦し、現在は欧州を主戦場にしている。身長166センチ。株式会社梅の花所属。