最終日に一時は首位に立った「全英オープン」では、待望の復活優勝とメジャー15勝目が同時達成されるのではないか、と世界中のファンが釘付けになった。「全米プロゴルフ選手権」でもウッズ勝利の可能性が現実に感じられ、大勢のファンが胸を高鳴らせたことと思う。

レギュラーシーズンを世界26位で終えたときは、まだ復活優勝を遂げてはいなかったが、それでもウッズは「今年は最高のシーズンだった」と満足の笑顔。しかし、それで終わりではなかった。

プレーオフ4試合はウッズ本人の予想を上回って最終戦まで勝ち進み、ツアー選手権最終日はセキュリティーの制止を振り切ってフェアウェイになだれ込んだ大観衆に見守られながら通算80勝目を挙げた。

これほどのウッズ・フィーバーが起こることは誰も予想していなかった。そもそもウッズ本人が「僕はついこの前まで、歩くことも球を打つこともできなかった」と自身の復活ぶりを驚いていたほどで、まさに奇跡の復活。一大ドキュメンタリーのタイトルは「奇跡の軌跡」と名付けられてもいい。

ウッズの「奇跡」や「軌跡」が私たちにもたらしてくれたものは、諦めず信じ続けることの大切さ、努力は必ずや報われるという希望、そして、いつまでもどこまでも挑み続けようという勇気だったのではないかと思う。

ウッズ自身が得たものは、以前とは少し異なる実感や喜びだった。かつてのウッズは勝つことだけを目指して戦ってきたが、「二度と戦えない」とまで感じたどん底から復活した今年のウッズは、戦えることに心の底から喜びを感じ、周囲のサポートやファンの声援に感謝の気持ちを抱き、何より2人の子供たちを大切に思っている。