“ブラック・マンバ（毒蛇）”の異名を取ったブライアントの考え方や姿勢がしたためられた「マンバのメンタリティ」という本を読み、「そのおかげで僕は強い心を持てるようになった。コービーの不屈の精神やチャレンジ精神、ハードワークを学んだ」というフィナウは、今大会では毎日、16番でブライアントのユニフォームを羽織ってプレー。最終日は2位に2打差でこのホールを迎え、優勝目前まで迫っていた。

しかし、残念ながらフィナウは勝利を逃した。17、18番で見事なバーディを奪ったウェブ・シンプソン（米国）に並ばれ、プレーオフ1ホール目でもバーディを奪ったシンプソンに軍配が上がった。

2016年「プエルトリコ・オープン」で初優勝を挙げたフィナウは、その後、メジャーでもレギュラー大会でも何度も優勝争いに絡み、世界ランキング13位まで上昇していたが、なかなか2勝目が挙げられず、ブライアントを想いながら戦った今大会でも2勝目は幻に終わってしまった。

フィナウにとっては、あまりにも悔しい敗北だった。しかし、フィナウに悔しさを残す形になったことに、むしろブライアントの魂が感じ取れた気がしている。

振り返れば、通算6勝目を飾ったシンプソンは、3年前、まさにこの大会で松山英樹とのプレーオフを戦って惜敗し、彼もこの場で悔しさを噛み締めた。翌年、「ザ・プレーヤーズ選手権」を制して復活優勝を遂げたが、大観衆の中で惜敗したシンプソンの悔しさはなかなか癒えなかったそうだ。

「ずっと嫌な思い出を抱えていたけど、自分がやるべきことに集中し、プレーオフでは72ホール目で得たいい感触、いいプレーをリピートするのみだと自分に言い聞かせながら73ホール目のティに立った」