そんな中、目を閉じてパットすることがガルシア復調のカギになったことは、とても興味深い。しかし、一番驚かされ、一番興味を覚えたのは、目を閉じてパットすることを「それがいい。やりましょう」と賛成し、ガルシアの背中を押したのが、彼のサポートチームでもトレーナーでもコーチでもなく、妻のアンジェラだったという事実だ。

「アンジェラと話し合い、目を閉じてパットを打とうと決めたんだ」

振り返れば、あのマスターズ勝利もアンジェラの支えがあってこそだった。感情の起伏が激しく、すぐに悪態をついてボロボロになっていたガルシアに、当時の恋人アンジェラは歴史的偉人たちが残した人生の教訓を毎日1つずつ教えた。それを復唱しながらゴルフをするようになったガルシアは、徐々に心穏やかなナイスガイへと変身。集中力を保った静かなゴルフでオーガスタ・ナショナルを制し、グリーンジャケットを羽織った。

しかし成績が不安定だったここ数年は、バンカー内でサンドウエッジを振り回すなど、再び悪態をついたこともあったが、またしてもアンジェラがガルシアを心穏やかにプレーするナイスガイへ引き戻し、そして勝利へと導いた。

最終日の14番のイーグルも、セカンドショットをピン80センチにつけた18番のバーディーも見事だった。だが、もっと見事だったのは、その間の3ホールで、きっちりパーを拾い続けたこと。最も心が揺れていたであろうその3ホールこそ、目を閉じたパットが一番生きていた。

ガルシアはマスターズ優勝後にアンジェラと結婚。2018年には長女アゼリアが、今年4月には長男エンゾが生まれた。愛する妻と子どもたちの存在はガルシアの何よりのエネルギーの源だ。