ウイニングパットを沈めたキョンフンを18番グリーンの奥で迎えたのは、韓国人選手の「大先輩」、K・J・チョイとカン・スンだった。

振り返れば、チョイが米ツアー参戦を開始したのは21年前の00年のこと。その2年後、韓国人として初の米ツアー優勝を果たし、通算8勝を挙げ「コリアン・プレーヤーのゴッドファザー」とも評されている。そんなよき先駆者、よき手本がいてくれたからこそ、その後、韓国人選手は次々に米ツアーにやってきては勝利を挙げ、キョンフンが8人目の韓国人チャンピオンに輝いたのだ。

「大先輩」らの出迎えはサプライズだったそうで、チョイに何度もお辞儀や会釈をしながら感謝していたキョンフンの姿は微笑ましかった。

優勝インタビューでマイクを向けられると「長い1日だった。誰にとってもハードなコンディションだったけど、忍耐とポジティブ思考で頑張った。（優勝したことが）まだ信じられないけど、とてもハッピー。たどたどしい英語だけど、みなさん、ありがとう」と自力の英語でスピーチを披露した。米TV中継の解説者やアナウンサーは「キョンフンが優勝インタビューに英語で応えたことはビッグ・チャレンジ」と笑顔で讃えていた。

「初優勝したら、フィストパンプでガッツポーズを取ろうなどと以前から思っていたけど、実際は全部忘れてしまった」と、通訳に助けられながらも自力の英語でなんとか気持ちを伝えたキョンフンの姿はとても初々しく、米国のゴルフファンも好感を抱いたことだろう。

誰かが何かにチャレンジする姿を目にすれば、自ずと応援したくなる。悲願が叶った瞬間を目にすれば、国籍や人種、有名無名に関わらず、自ずと拍手を送りたくなる。「悲願」はいつか叶うのだと思えれば、勇気も元気も出る。だから、ゴルフは素晴らしい。そう感じられる大会だった。