注射などの処置を受け、ファウラーの体調は徐々に回復に向かったが、それでも11月初旬に出場予定だった大会を欠場するなど、なかなか完全回復には至らず、成績は徐々に下降していった。

20年になり、コロナ禍によるツアー休止を挟んだ後は、優勝の二文字からは、すっかり遠のき、それどころか上位入りもままならず、ランキングは下降の一途をたどった。

起死回生を狙ってスイング改造に取り組んだことは、成績低迷にさらに輪をかける形になり、とうとう今年はマスターズも全米オープンも出場を逃がす低迷ぶりだ。

成績下降の発端は、あの感染症による体力、気力の低下だったのだと思うのだが、それはあくまでも彼のフィジカル面でのきっかけにすぎず、彼が本当に戦わざるを得なかったものは、むしろメンタル面でのあれこれだ。

09年にプロ転向し、米ツアー参戦を開始したファウラーは、その瞬間からスポットライトを浴び始め、国民的スターと化していった。端正な容姿、精緻で強気なゴルフは素晴らしく、観戦に訪れるジュニアゴルファーたちの多くがファウラーの真似をしてオレンジ色のウェアに身を包むようになった。

しかし、光り輝く者にジェラシーの目が向けられるのは世の常だ。ファウラーには何かにつけて「何か」が言われるようになった。なかなか2勝目が挙げられなかった15年の春には「米ツアーで最も過大評価されている選手」という不名誉な称号を授けられた。