ウッズが幼少よりプレーを重ねていたのはパブリックのショートコースなど、名門とはいえないコースばかり。そんな16歳の少年が「コースの名前にCC（カントリークラブ）とつくところでプレーできるのがまずクールだった。練習場ではコインを買わなくてよかったし、バラタの新品のボールがたくさん置いてあったので、バッグいっぱいに詰めて持って帰りたかったよ」とツアーの環境が、まず何よりも光って見えた。

「それだけでなく、あのときここでプレーできて、自分がどこまでハードワークをしないといけないか分かったし、チャーリーともそういう話しをしていた」。当時から相談をし、慕っていたシフォード氏との約束が今のウッズを作り上げたと言っても過言ではない。

そんな少年が5年後に「マスターズ」でメジャー初優勝を挙げ、これまで積み重ねたツアー勝利数は歴代1位タイの『82』。19年のマスターズ優勝でジャック・ニクラス（米国）がもつメジャー18勝まで残り3勝に迫ったところで、昨年はこの同じ地で大事故に見舞われた。

昨年大会で優勝カップのプレゼンターを務めた直後にロサンゼルス近郊で自動車事故を起こし重傷のケガを負った。「まだ歩くことを気にしないといけないし、ゴルフについても理想にはほど遠い」と、ツアー復帰戦の時期も未定と明かす。「まだまだ道のりは長い」と自身のプレーに期待することは今のところない。大会ホストとして後輩たちのプレーを見守る役にまわり、夢をつなぐ役目を果たしていく。（文・高桑均）