2023年のゴルフ界は、最初から最後まで「?」と「!」の連続だった。
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激しく揺れた2023年のゴルフ界 来年は“もっと激動!?”【舩越園子コラム】
激しく揺れ動いた2023年のゴルフ界。印象的だった出来事の数々を振り返る。
配信日時:2023年12月25日 03時00分
2023年のゴルフ界は、最初から最後まで「?」と「!」の連続だった。
春先は「LIVゴルフへの世界ランキングのポイント付与は一体どうなるのか?」という「?」があふれ返り、それは同時に「LIVゴルフ選手のメジャー4大会への出場は今後どうなるのか?」という疑問でもあった。
4月の「マスターズ」では、LIVゴルフの“顔”的存在となっているフィル・ミケルソン(米国)が出席するチャンピオンズ・ディナーは「一体どんな雰囲気になるのか?」と、人々は好奇の視線を向けていた。
蓋を開けてみれば、ディナーの席では「フィルは一言もしゃべらず、静かに座っていた」。だが、彼は一転して試合では秀逸なゴルフで優勝争いに絡む大活躍を披露した。
優勝はジョン・ラーム(スペイン)だったが、ミケルソンとブルックス・ケプカ(米国)が2位タイ、パトリック・リード(米国)が4位タイに食い込み、トップ5に3人のLIVゴルフ選手が入ったことは、誰もが「!」を付ける驚きの結果だった。
5月の「全米プロ」では、ケプカが優勝。LIVゴルフ選手のメジャー出場の是非や可否が取り沙汰されていた中で、LIVゴルフ選手がメジャーを制したことは、さらなる驚きだった。
そして、最大の驚きとなったのは、PGAツアーのジェイ・モナハン会長とLIVゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パフリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・ルマイヤン会長が6月に電撃発表した統合合意だった。
激しく敵対していたはずの2つのツアーのリーダーどうしが、突然、笑顔で握手やハグを交わして見せたことは、まさに青天の霹靂(へきれき)だったが、一方的に合意を発表されたPGAツアー選手たちは激しい怒りを噴出させ、モナハン会長の信頼は一気に地に堕ちた。
その後はPGAツアーの理事会や選手会が中心となってPIFとの交渉を進めているが、タイガー・ウッズ(米国)が理事に加わったと思ったら、入れ替わるようにローリー・マキロイ(北アイルランド)が理事を辞任。「PGAツアーは一体どうなるのか?」と誰もが不安を感じている。
こうして振り返ると、「?」や「!」ばかりが思い出される2023年だが、良いこともあった。長いスランプに喘いでいたリッキー・ファウラー(米国)が4年ぶりの復活優勝を果たし、成績低迷が続いていたジャスティン・トーマス(米国)も復調の兆しを見せている。そして、2021年2月の交通事故で右足に重傷を負ったウッズが「もう右足に痛みはない。2024年は毎月1試合に出る」と語ったことは、数少ないグッドニュースだった。
私自身は、ラームがLIVゴルフへ移籍したことが、何よりの驚きであり、ショックでもあった。母国スペインを離れ、単身渡米してアリゾナ州立大学に留学した当時のラームは、米国のファストフードのチャイニーズ・レストランで生まれて初めてフォーチュンクッキー(おみくじクッキー)に出会い、その中の紙片を珍しそうに取り出した。そして『アナタの才能は必ず花開き、報われる』というフレーズが記されたおみくじを「今でも大事に持っている」。
今年のマスターズで優勝した際、しみじみそう明かしたラームが、5億ドルとも6億ドルとも推測されている契約料を受け取ってLIVゴルフへ移籍したことは、果たして彼にとって本当に「報われた」ことを意味しているのだろうか。その「?」は、私の頭の中では依然として渦巻いている。
LIVゴルフの世界ランキングの申請は、10月にOWGR(オフィシャル・ワールド・ゴルフ・ランキング)によって正式に却下され、ランキングが低下の一途となるLIVゴルフ選手たちがメジャー4大会に出場する道は、今後は限りなく狭められていく。
PGAツアーは来季に賞金総額2000万ドル級のシグネチャー大会を8試合も開催する予定だが、そのうちの5試合は予選落ちのないノーカット大会。「PGAツアーはLIVゴルフ化している」と批判もされている。
どちらも、あまりいい方向に動いているようには見えないが、PGAツアーとPIFの統合に関する正式発表のデッドラインはイヤーエンドの12月31日。果たして、どんな内容が発表されるのか。今は想像すらつかないほど、交渉は闇に包まれている。
激動の2023年は暦の上では、あと数日で終わりになるが、ゴルフ界の揺れはまだまだ続き、2024年はさらなる激動が予想される。選手たちの誠実にゴルフに向き合う姿勢と大勢のファンのゴルフを愛する気持ちが、ゴルフ界が激動期を乗り越えるための最後の砦となる。
その砦が「どうか丈夫な砦となってほしい」と祈りながら、新年を迎えたい。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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