<フェデックス・セントジュード選手権 最終日◇13日◇TPCサウスウィンド(米テネシー州)◇7243ヤード・パー70>
「残り3ホールで3つ伸ばさないといけない」。最終日、松山英樹が15番ホールを終えた時点で、悪天候により一時中断となった。ここで現在、自分が置かれている状況を冷静に把握。この時点でトップとは10打近くの差があった。松山が見ていたのは優勝ではない。フェデックスカップ・ランキングを意識していた。
前週から始まったプレーオフシリーズについておさらいしよう。第1戦の「フェデックス・セントジュード選手権」はフェデックスカップ・ランキング70位まで、第2戦の「BMW選手権」は50位まで、最終戦の「ツアー選手権」は30位までと出場枠が絞られていく。そして最終戦を終えてポイントランキングトップの選手に“年間王者”の称号とビッグボーナスが与えられる。
松山はフェデックスカップ・ランキング57位でプレーオフシリーズ初戦に参戦。つまり今週上位に入らないとシーズンが終わってしまうところだった。PGAツアーのリーダーボードの右端にはフェデックスカップ・ランキングが表示されており、大会の順位に合わせて、このランキングも変動していく。
冒頭の話に戻すと、松山が15番を終えた時点でのトータル6アンダーは、フェデックスカップ・ランキング57位で次戦の出場圏外だった。そこから50位以内に滑り込むためには、残り3ホールで3つ伸ばさないといけないと松山は考えていた。1つのミスも許されない絶対絶命の状況と言っていいだろう。
再開直後の16番パー5では308ヤード先のフェアウェイに運ぶと、残り200ヤードから6番アイアンでピンの手前3メートルにつけてイーグル。これでフェデックスカップ・ランキングは52位に上がる。そして、続く17番でも3メートル強につけてバーディを奪い、目標に到達。ついにフェデックスカップ・ランキング47位の次戦出場圏内に入った。
「最終ホールのボードを見て、47位まで上がったのを知っていた」。しかし、左ドッグレッグで左に池が配された最終18番パー4で、松山はティショットを右ラフに外し、セカンドショットはグリーン右奥にオーバーした。グリーンまでは少し打ち上げて、下り傾斜に打っていく簡単ではないアプローチ。これについて松山は「普段だったら(10段階で)3番目くらい。(次戦出場がかかるショットで)8か9くらいだった」と振り返る。
グリーンエッジを少し越えたところにフワッと落とし、カップまで転がしていくこのアプローチは50センチにピタリ。難なくパーで切り抜けて次戦進出を決めた。終わってみれば残り6ホールで5つ伸ばすチャージ。「何でか分からないですけど、絶対にいいプレーをしないといけないところでできたのは良かったと思います」と松山は息をついた。
それでも、現役選手最長となる“10年連続”でのツアー選手権出場に黄色信号が灯る状況は変わらない。「来週(第2戦)プレーできるかぎり最終戦までいくチャンスはある。今週よりももっともっといいプレーをしないとチャンスはないと思うので、いい準備をして頑張りたいと思います」。次戦も気の抜けないラウンドが続く。