ゴルフの祭典と呼ばれる「マスターズ」の最終日、2位に4打も引き離し、2022年に続く大会2勝目を達成したスコッティ・シェフラー(米国)の圧勝ぶりを眺めながら、人間はたった2年間でこんなにも変われるものかと、あらためて驚かされた。
振り返れば、2年前のシェフラーはなんとも弱々しい若者だった。最終日を最終組で回ることが決まった土曜日の夜には、緊張とプレッシャーから、食べたばかりの夕食を吐き出してしまった。日曜日の朝には、愛妻メレディスの胸の中で、「僕にはマスターズで優勝争いをする準備なんて、まだできていないんだ」と言いながら、幼い子どものように泣いていた。
それほど気弱になっていたシェフラーは、気丈な愛妻から「勝っても崩れてもアナタはアナタ。私がアナタを愛していることに変わりはないのよ。すべては神の定めなのよ」と励まされ、なんとかオーガスタ・ナショナルにやってきた。
震えながら1番ティに立ったシェフラーは、コース上では愛妻ではなく相棒キャディのテッド・スコットに励まされ、少しずつ自分と自分のゴルフを取り戻し、そうやって彼はマスターズ初優勝を挙げた。あの日からきょうまでのわずか2年の歳月のなかで、シェフラーは次々に勝利を重ね、通算8勝を誇る世界ランキング1位の王者となって今年のオーガスタにやってきた。
最終日を最終組で回ることは、2年前も今年も同じだった。だが、2年前と大きく異なっていたのは、彼の傍らに愛する妻の姿がなかったこと。初産を間近に控えているメレディスは、今週はテキサス州の自宅に留まっており、シェフラーはオーガスタ・ナショナルのそばに借りたレンタルハウスに1人で滞在していた。
「でも、本当に一人は嫌だから、友人たちを呼んで一緒に滞在してもらっている」。寂しがり屋なところはシェフラーの性格ゆえに今後もきっと変わらないと思われるのだが、シェフラー自身、2年前と今とでは「いろんなことが大きく変わっている」ことを実感していた。