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「破竹の勢い」29歳のルーキー、ジェイク・ナップの勝利を支えたもの【舩越園子コラム】

メキシコ・オープンを制したのは、29歳の米国人選手、ルーキーのジェイク・ナップだった。

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2024年2月26日 12時00分

<メキシコ・オープン 最終日◇25日◇ビダンタ・バジャルタ(メキシコ)◇7456ヤード・パー71>

PGAツアーのメキシコ・オープンを制したのは、29歳の米国人選手、ルーキーのジェイク・ナップだった。

初優勝で大喜びをするナップ【写真】

ナップは最終日を2位に4打差の単独首位で迎えたが、2つのボギーが先行した序盤は苦戦気味だった。だが、我慢を重ねた末に2つのバーディーを奪い返し、見事、2位に2打差で勝利した。
 
この日、フェアウエイを捉えたのは、わずか2回しかなかったが、「なんとかしてパーを取ること、スコアを安定させることだけを考えていた」とナップは振り返った。
 
その言葉通り、ショットがどんなに乱れても粛々と戦い続け、どこからでも寄せてパーを拾い、バーディーも獲り、そうやって初優勝を挙げたナップの執拗なゴルフは、彼の生きざまの反映だったように感じられた。
 
PGAツアーによると、カリフォルニアで生まれ育ったナップは高校時代までは突出したジュニアゴルファーだったそうだ。
 
「ハイスクールの3年生のとき、近所のゴルフ場で58を出した。帰り際、大人のゴルファーたちから『キミたち、楽しかったかい?』と声を掛けられ、僕の友達が『彼は58で回ったんだ』と告げると、大人たちは『すごいなあ』と褒めてくれたけど、明らかに彼らは僕がハーフで58だったと思っていた」
 
名門UCLAのゴルフ部を経て、2016年にプロ転向。そこまでは順風満帆なゴルフ人生だったが、そこから先は波乱続きになった。
 
草の根のミニツアーやPGAツアー・カナダ、米下部ツアーのコーン・フェリーツアーなどで腕を磨いた。しかし、21年には、あらゆるツアーの出場権を失い、転戦費用も底を尽き、アルバイトをしながら合間で練習する以外に先へ進むことができなくなった。
 
「ナイトクラブのセキュリティ(警備員)の仕事をした。ハロウィンやニューイヤー・イヴには大勢の酔客が殺到し、ケガをさせずに制止するのは大変だった」
 
その仕事を8か月間も続けていたとき、ナップが心の中でいつも唱えていたのは、幼いころ、自宅近くのゴルフ場の高齢のクラブプロから聞かされた「竹」のいわれだったそうだ。「竹は、まるで眠っているかのように何の変化も見られないまま、長い間、そこにある。でも、ある日、突然、ぐんぐん伸び始め、数週間のうちに10メートルぐらい伸びる」。
 
日本のモノの本によると、「破竹の勢い」は竹が一気に「伸びる」ではなく「割れる」と記されており、少々、解釈は異なっているようではあるが、ともあれ「だから僕も、いつかきっと」と思うことが、ナップの励みになっていた。
 
なんとか費用を稼いでは小さな試合に挑み、わずかな賞金を得る転戦生活では、大好きだった祖父が毎試合、いや毎日のようにメールで励ましてくれたそうだ。
 
その祖父が昨春、がんで逝去した。ナップは祖父のイニシャルをタトゥーにして右腕に刻むと、祖父の魂に押し上げられたかのようにコーンフェリーツアーで好成績を重ね、今季のPGAツアー出場資格を得た。
 
そして、デビューからわずか9試合目のメキシコ・オープンで初優勝。今季3人目のルーキー優勝を飾ったナップの急成長ぶりは、まさに「破竹の勢い」と言っていい。
 
向こう2年間のシード権を得て、優勝賞金145万8000ドル(約2億1930万円)を手に入れたナップは、もうナイトクラブのセキュリティのアルバイトをせずとも戦っていくことができる。
 
マスターズ出場資格も得て、4月には夢にまで見たオーガスタ・ナショナルの土を踏む。「祖父も喜んでくれていると思う。ありがとう、グランパ」。
 
ナップという名の「竹」は、これからもっともっと伸びていくのではないだろうか。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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