今週は、日本の男子選手たち総勢12名が、世界の3つの異なるツアーに同時に挑んだ珍しい1週間だった。
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アクティブに世界へ挑む日本の男子選手たちに膨らむ期待【舩越園子コラム】
今週は米ツアー、欧州ツアー、アジアンツアーに多くの日本勢が出場した。
配信日時:2023年2月6日 03時00分
今週は、日本の男子選手たち総勢12名が、世界の3つの異なるツアーに同時に挑んだ珍しい1週間だった。
PGAツアー「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」には小平智が出場。DPワールド(欧州)ツアー「ラアス・アル・ハイマ選手権」には星野陸也、久常涼、比嘉一貴、岩崎亜久竜の4名が挑み、アジアンツアー「PIFサウジインターナショナル powered by ソフトバンクインベストメントアドバイザーズ」には香妻陣一朗や金谷拓実など7名が臨んだ。
強風に見舞われたペブルビーチ・プロアマはサスペンデッドや日没順延による不規則進行となり、プロ部門の優勝争いは月曜日に持ち越されてしまった。だが、唯一の日本勢選手として出場した小平は、強風下でも必死に踏ん張り、孤軍奮闘していた姿が印象的だった。
ラアス・アル・ハイマ選手権では、星野が安定したゴルフで6位タイに食い込む大健闘。久常は28位タイ、比嘉は36位タイ、岩崎は61位タイに終わったが、日本勢4名全員が予選通過を果たして4日間を戦ったことは、過去の例に照らしてみれば、快挙とも言える踏ん張りだった。
久常は同ツアーのQT(予選会)から出場権を獲得。他の3名は、昨秋にPGAツアーとJGTO(日本ゴルフツアー機構)がパートナーシップを結んだことでJGTOの賞金ランキング上位3名にDPワールドツアー出場資格が付与される新たな制度が創設されて出場権を得た。4人とも得られたチャンスを早々に生かし、世界へ挑み始めているところが素晴らしい。
久常は現地メディアによる英語の取材に、自力で対応していた。日本人男子選手が英語で取材に対応した例は、中学生で渡米した今田竜二を除けば、これまでは皆無に近かったともいえる。久常の自力の英語対応は欧米のゴルフメディアの目には「珍しいケース」と映ったことだろう。
ただ最近は、久常のみならず中島啓太なども自力の英語で対応するなど、プレー以外の面でも日本の男子選手の姿勢にグローバル化が見え始めている。そうした変化がプレーそのものに好影響をもたらすことは、これから彼らによって実証されていくことだろう。それを見るのが今からとても楽しみである。
日本人選手ばかりではなく、世界の若者の今後の成長と活躍にも期待が膨らんでいる。今大会では、デンマーク出身で21歳の一卵性の双子兄弟、ラスムス・ホイガードとニコライ・ホイガードが2人揃って優勝争いに絡む活躍を見せ、ゴルフ界にその存在を印象付けた。
31歳の英国人、ダニエル・ガビンスのネバーギブアップの戦いぶりも圧巻だった。首位から2打差で最終日に臨んだガビンスは、2位に2打差の単独首位で18番(パー5)へ。ティショットを2度も池に入れながら8メートルのダブルボギーパットを沈め、プレーオフに望みをつないだ。
追撃をかけるべき他選手たちはスコアを伸ばし切れず、ガビンスが逆転で優勝。世界ランキング296位から圧巻の勝利を飾り、「すべては支えてくれた家族のおかげです」と素敵なスピーチを披露したガビンスの姿を、現地にいた4名の日本人選手が間近に眺め、何かを感じてくれていたらいいなと思う。
一方、同じアラビア半島で開催されたサウジインターナショナルでは、初日に好発進したタイ出身の15歳のアマチュア、ラチャノン・チャンタナヌワットが注目を集めた。「TVカメラを意識した途端、崩れた」と振り返っていたが、彼に秘められた未来の可能性は多大である。
日本人選手7名のうち、決勝進出を果たしたのは香妻と金谷のみで、5名が予選落ちとなったことは残念な結果だった。だが、ともあれアラビア半島に日本人選手が11名も集結し、4名がDPワールドツアー、7名がアジアツアーに挑み、さらに別の1名が米国でPGAツアーに参戦した。総勢12名がそれぞれの意思とそれぞれの道を通じて同週に世界の3つのツアーに挑んだ現象は、日本のゴルフ史上、きわめて珍しい出来事だった。
それが実現された背景には、米欧日のパートナーシップ締結もあれば、リブゴルフが創設され、その傘下に入ったアジアンツアーの環境が整備拡大されたことなどがある。だが、何より大きいのは、日本の若い選手たちの意識が変わりつつあることだ。世界に出たい、世界に挑みたい、そのためにできることを何でも自力でやろうというアクティブな姿勢が、彼らを自ずとグローバル化させ、今週の珍しい現象を創り出したと言っていい。
これから日本の男子ゴルフは、きっと面白くなる。若い選手たちのアグレッシブな意識と姿勢が、彼らを世界へと引き上げていく。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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