サンクスギビングデー(感謝祭)を翌日に控えた11月22日(米国時間)、PGAツアーはPIP(プレーヤー・インパクト・プログラム)の2023年の結果を選手たちにEメールで通知した。
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PGAツアーの体質が「今ごろ」変わりつつある!?【舩越園子コラム】
ひとりの選手の“告発”により、白日の下のさらされたPIP。それから感じるPGAツアーの変わりつつある姿勢とは?
配信日時:2023年11月27日 03時00分
サンクスギビングデー(感謝祭)を翌日に控えた11月22日(米国時間)、PGAツアーはPIP(プレーヤー・インパクト・プログラム)の2023年の結果を選手たちにEメールで通知した。
本来ならPIPの結果は一般には公表されないはずのものだが、PIPの在り方に怒りを爆発させたネイト・ラシュリーという通算1勝の40歳の米国人選手が、PGAツアーから受け取った結果表をそのままSNSに掲示したため、すべてが明らかになった。23年のPIPは1億ドル(約149億円)のボーナスがトップ20に分配されるという豪華すぎるほど豪華な内容だった。
1位に輝いたローリー・マキロイには1500万ドル(約22億4100万円)、2位のタイガー・ウッズには1200万ドル(約17億9300万円)、3位のジョン・ラームには900万ドル(約13億4500万円)という具合にブレイクダウンされていき、20人の中では最も下位となる5名(16位~20位)にも、それぞれ200万ドル(約2億9800万円)が授けられることになった。
そもそもPIPは、PGAツアー選手のリブゴルフへの流出を食い止め、PGAツアーに繋ぎ止めるために、21年に大慌てで新設されたボーナス制度だ。試合での成績やフェデックスカップ・ランキングとは無関係に、メディアへの登場頻度や露出度、人々への認知度といったものを数値化し、PGAツアーへの貢献度をランク付けするというもの。平たく言えば、人気ランキングに近い。
だが、その指標は非常に複雑難解で、しかも非公表だ。さらに今年は使用する指標を従来のQスコアなるものからMARCアウェアネスなるものへ変更し、「PGAツアーにもたらしたインパクトの大きさを計った」。
その結果、21年と22年は連続して1位に輝いたウッズが、3回目の今年は初めて2位に後退し、マキロイが入れ替わって初の1位に輝いたのだが、ここまでの説明を聞いて、「ふむふむ」「なるほど」と頷ける人は、決して多くはないだろう。
腰の手術や交通事故で戦線離脱が続いているウッズは、PIPが実施されたこの3シーズンにおいて、出場した試合は全部でわずか8試合(途中棄権を含む)。それでもPIPでは、初年度800万ドル、昨年1500万ドル、今年1200万ドルで合計3500万ドル(約52億円)を獲得。まさに「出るだけ」「いるだけ」で、とんでもない大金が彼の懐に転がり込んだことになる。
そんな現状に怒りを爆発させたラシュリーいわく、「PGAツアーのメンバーは150~200人もいるのに、たった20人に1億ドルを分配するPIPは馬鹿げている」。SNSでも同様の声が多々あがり、「今季、絶不調だったジャスティン・トーマスが、それでもPIPでは8位で500万ドルをもらうのはおかしい」といった指摘もあった。
プロセスや結果が理解しうるものかどうか、透明性が感じられるかどうかが、選手たちから不満が出るか出ないかの分かれ目になる。だが、それより何より、PIPというボーナス制度は、昔から囁かれてきた「PGAツアーは上位選手にはきわめて甘く、下位選手にはどこまでも厳しい」というフレーズをそのまま具現化したかのような内容になったために、水面下に潜んでいた不満や怒りが一気に爆発してしまったのだろう。
「一体どれだけのゴルフファンがPIPを知っているのか?」と、ラシュリーは首を傾げている様子だが、これは、すこぶる的を射た指摘だと私は思う。リブゴルフ対策として創設されたPIPは、「選手のため」「PGAツアーのため」に捻り出された苦肉の策。しかし、「選手のため」と言いながら「全選手のため」にはなっておらず、ましてや「ファンのため」になっているようには、まったく感じられない。
だが、ここへ来て、いい兆しもある。これまでPGAツアーは、一方的に決めた事柄を選手たちに一方的に通知するのが常で、PIPもそうやって選手たちに知らされ、有無を言わさず実施されてきた。
だが、24年はPIPのボーナス総額を今年の1億ドルから5000万ドルへ半減させ、「余り」の5000万ドルは、選手たちに広く分配されるフェデックスカップのボーナスへ回されるという。PIPの支給対象も来年はトップ10へと、やはり半減される。
これらはPGAツアーの選手会が合議で決めた「新たな決め事」だ。そうやってPGAツアーは、みんなの声が反映される健全なツアーにようやく変わりつつある。「今ごろ?」「今さら?」と思えなくもないが、遅すぎることは決してない。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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