<マスターズ 初日◇10日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇7555ヤード・パー72>
“アーメン・コーナー”と称される11番〜13番ホールをはじめ、名手たちが手を焼く聖地・オーガスタ。初日の13番では、松山英樹の3打目がピンに直撃して池に入り、ダブルボギーを喫した。とりわけバックナインは、運も絡む難所が連なる。
これまでも多くの実力者が後半にスコアを崩し、涙をのんできた。その象徴的な出来事を振り返る。
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■まさかの大失速 マキロイVSアーメンコーナー
2011年大会。初日からトップを守り、2位に4打差をつけて最終日を迎えたローリー・マキロイ(北アイルランド)だったが、10番で悪夢が待ち受けていた。
ティショットを大きく左に曲げると、フェアウェイから放った3打目はまたも左へ。アプローチが木に当たる不運もあり、トリプルボギー。完全に勢いを失ったマキロイは、最終日に「80」を叩いて優勝を逃した。
その後13年間、マスターズはキャリアグランドスラム達成を阻む最大の壁となっている。
■若き王者に試練 12番の悲劇
連覇をかけて16年大会に挑んだ、当時22歳のジョーダン・スピース(米国)。2位に5打差をつけてサンデーバックナインに突入したが、まさかの乱調で連覇を逃した。
10番から2連続ボギーを喫して迎えた12番パー3。ティショットを池に入れると、ドロップして放った3打目がまたも池ポチャに。5打目でなんとか池を越えたが、このホールで痛恨の“+4”。後続との大量リードを、なんと10番から12番の3ホールで失ってしまった。
13番と15番でバーディを奪う意地は見せたが、「73」で2位。ダニー・ウィレット(イングランド)に優勝を譲った。表彰式では、うつろな表情でグリーンジャケットを手渡す姿が印象的だった。
■5度の池ポチャで“13打” 昨年覇者に何が起こった?
2017年大会で悲願のメジャー初優勝を挙げたセルヒオ・ガルシア(スペイン)。2018年はディフェンディングチャンピオンとして意気揚々とオーガスタに挑んだが、初日に予期せぬアクシデントに見舞われた。
その舞台となったには15番パー5。6Iで放ったフェアウェイからの2打目が池へ。打ち直しの4打目はグリーンに着弾するも、傾斜を下って手前の池に転がり落ちた。その後はまるでリプレイを見るかのように次々とボールが池に消えて、なんと計5回もの池ポチャを喫した。
結局、このホールは“13打”でホールアウト。「何を言えばいいのか…。いいショットを打ったんだけどね。“13”も打つのはキャリアで初めてだ」」と肩を落とした。“ガラス”と形容されるオーガスタのグリーンが、いかに繊細なスピンコントロールを要求するかを示す一幕だった。
■大会5勝タイガー・ウッズがまさか… 12番の“10打”で散る
2016年のスピースと同じく、タイガー・ウッズ(米国)も12番パー3で苦い思いを味わった。2019年に歴史的な復活劇で大会5勝目。この2020年大会にはディフェンディングチャンピオンとして臨んでいた。
最終日の12番。ウッズはティショットを手前の池に入れると、ドロップした3打目もグリーンをキャッチしたものの、バックスピンがかかって再び池へと消えた。
災難は続いた。5打目はグリーン奥のバンカーへ。ボールはバンカーの縁にあったため、左足を極端に屈伸せざるを得なかった。窮屈な一打はグリーンを越えて、3度目の池ポチャ。8打目もグリーンに乗らず、スコアカードには“10”が刻まれた。
百戦錬磨のウッズでさえ崩れる、魔の12番。アーメン・コーナーの恐ろしさを、改めて世界に知らしめることになった。
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これまで数々の名勝負が生まれてきたマスターズだが、どんな名手でも崩れる瞬間がある。勝負の行方は、最終18番を終えるまで誰にもわからない。