PGAツアーのメキシコオープンatビダンタは、メジャー大会と格上げ大会の狭間に位置するレギュラー大会で、米国外の開催だったこともあり、出場選手の顔ぶれは決して豪華ではなかった。
ラームとフィナウ、「ゴルフキッズ」に想いを馳せた優勝争い【舩越園子コラム】
ジョン・ラーム対トニー・フィナウs。世界トップランカー同士の優勝争いは見応えがあった。
配信日時:2023年5月1日 03時00分
Round 4 | ||
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順位 | Sc | PLAYER |
1 | -13 | トニー・フィナウ |
2 | -12 | エリック・ヴァン・ローエン |
2 | -12 | ブランドン・ウー |
4 | -9 | アンドリュー・パットナム |
4 | -9 | オースティン・スマザーマン |
4 | -9 | アクシャイ・バティア |
4 | -9 | ウィル・ゴードン |
4 | -9 | エリック・コール |
9 | -8 | ベン・マーティン |
9 | -8 | ジミー・ウォーカー |
PGAツアーのメキシコオープンatビダンタは、メジャー大会と格上げ大会の狭間に位置するレギュラー大会で、米国外の開催だったこともあり、出場選手の顔ぶれは決して豪華ではなかった。
だが、世界ランキング1位のジョン・ラーム(スペイン)は昨年大会覇者として出場。ラームに次ぐランク上位者は16位のトニー・フィナウ(米国)というフィールドだったが、その2人が勝利を競い合った展開は、メキシコのゴルフファンにとって、ビッグボーナスとなった。
昨年大会はラームが優勝し、フィナウは2位だった。今年はその逆で、フィナウが優勝し、ラームが2位になった。そうなった理由は、理屈では説明しようがないが、あえて言うなら、トッププレーヤーとしての誇りと責任感、勝利を目指す熱い想いが2人を2年連続で優勝争いへ導いたのではないだろうか。
マスターズで優勝した選手の多くは、翌週は試合を休んで喜びに浸るのが常だが、今年のマスターズを制したラームは、翌週のRBCヘリテージに出場し、話題になった。
同大会は賞金総額2000万ドルの格上げ大会に指定されており、「だから出場した」と見る向きはあった。だが、ラーム自身は「僕が開催地のゴルフキッズだったら、マスターズ・チャンピオンのゴルフを絶対に見たいと思うはずだから」と出場理由を明かした。
そして今週のメキシコオープンにも同じ想いを抱いて出場した。今大会の賞金総額は格上げ大会の半分以下の770万ドルだが、ラームはメキシコの人々や子どもたちに「僕のゴルフを見せてあげたい」という一心で出場。その代わり、格上げ大会である翌週のウエルズ・ファーゴ選手権を欠場して休養を取る道を選んだ。
通算11勝を誇るラームだが、実を言えば、彼はいまなおタイトル・ディフェンドに1度も成功しておらず、今大会では初の「大会連覇」を目指していた。
最終日を迎えたとき、単独首位に立っていたのはフィナウで、ラームは2打差の2位だった。ラームが大会連覇を目指す一方で、フィナウは前年の雪辱と「世界ナンバー1に勝ちたい」という想いに駆られていた。
どちらも安定したゴルフでスコアを伸ばしていったが、5バーディを奪ったフィナウの勢いがやや上回り、ラームとの差を3打に広げて上がり3ホールへ突入。ラームが17番でボギーを喫した時点で、2人の差は4打へ広がり、フィナウの勝利はほぼ確実になった。だが、それでも18番でラームが披露した見事なバーディは、世界ナンバー1のプライドであり、メキシコのゴルフキッズへの精一杯のギフトだったのだろう。
そして、フィナウは72ホール目をしっかりパーで締め括り、ラームを3打差で抑え込んで、ツアー通算6勝目を挙げた。
「いい気分だ。世界一のラームを相手に、いっぱいいっぱいの戦いになることを覚悟していた。最後まで何が起こるかわからないと自分に言い聞かせながら戦った」
フィナウの両親はトンガとサモアの出身で、一家は米国ユタ州へ移住。フィナウは8人兄弟の上から3番目だ。タイガー・ウッズ(米国)が1997年マスターズを圧勝した姿をTV中継で目にした母ラベーナがフィナウと弟ジッパーに「ゴルフをさせよう」と思い立ち、当時、ゴルフをまったく知らなかった父ゲリーはジャック・ニクラス著「ゴルフ・マイ・ウエイ」を片手に2人の息子にゴルフを教えたそうだ。
「トニーとジッパーはガレージに古いカーペットを敷き、その上から壁に立てかけたマットレスに向かってボールを打っていた」という話を、以前、バレーボール選手だった2人の姉から聞かせてもらったことがあった。
父ゲリーは航空会社の貨物部門で働いていたが、8人の子どもたち全員にスポーツをさせ、中でも2人の男の子にゴルフをさせることは経済的に苦しい状況だったそうだ。
両親の困窮を肌で感じていたフィナウ兄弟は、ガレージで中古クラブを握って腕を磨きながらプロゴルファーになる日を夢見てきた。その姿は、ラームが自分のゴルフを見せたいと言った「ゴルフキッズ」そのものであり、そういうゴルフキッズ時代をフィナウもラームも自ら経験してきたからこそ、2人はこのメキシコの地で熱い優勝争いを演じることができたのだろう。
敗北が決まったラームが、まだウイニングパットを沈めていないフィナウに歩み寄り、すがすがしい笑顔でフィナウの肩を抱いて健闘と勝利を讃えた場面がとても印象的だった。
2人の素晴らしいゴルフと人柄を目にしたメキシコのゴルフキッズは、きっと「僕もああいうプロゴルファーになりたい」と感じたのではないだろうか。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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Round 4 | ||
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順位 | Sc | PLAYER |
1 | -13 | トニー・フィナウ |
2 | -12 | エリック・ヴァン・ローエン |
2 | -12 | ブランドン・ウー |
4 | -9 | アンドリュー・パットナム |
4 | -9 | オースティン・スマザーマン |
4 | -9 | アクシャイ・バティア |
4 | -9 | ウィル・ゴードン |
4 | -9 | エリック・コール |
9 | -8 | ベン・マーティン |
9 | -8 | ジミー・ウォーカー |
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