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苦労人が悲願達成 「初優勝」という三文字の“重み”【舩越園子コラム】

苦労人のブライアン・キャンベルがプレーオフ制し、念願のツアー初優勝をつかんだ。

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2025年2月24日 03時00分

PGAツアーの「メキシコオープンatヴィダンタワールド」で、予選ラウンドから注目を集めていたのは、南アフリカ出身の20歳のルーキー、アルドリッチ・ポトギーターだった。

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昨年1月に米下部のコーンフェリーツアー「バハマ・グレート・アバコ・クラシック」を19歳で制し、同ツアー史上最年少優勝を挙げたポトギーターは、その翌月の大会では「59」をマークして、技術力と爆発力をアピール。今大会2日目も「61」で回り、リーダーボードを駆け上がった。

しかし、単独首位で迎えた最終日は接戦となり、31歳の米国人選手、ブライアン・キャンベルとのサドンデス・プレーオフへ。勝利を手に入れたのは、ポトギーターではなくキャンベルだった。

3日目までの流れや勢いは、明らかにポトギーターに向いていた。今週は飛距離でも、バーディ獲得数でもフィールド内で1位を保ち、着実に勝利への道を快走しているかに見えた。

だが、最終日はやや不安定になり、1打差の2位から出たキャンベルに並ばれ、サドンデス・プレーオフ2ホール目でバーディパットを沈めたキャンベルに勝利を奪われた。

20歳のルーキーのスピード優勝とはならなかったが、一方で、惜敗ばかりを繰り返してきたキャンベルがプロ転向から10年目にして初優勝を挙げた悲願達成は素敵なストーリーだった。

イリノイ大学の大学生だった2015年、「全米オープン」でローアマに輝いたキャンベルは、同姓同名のNHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)のシカゴ・ブラックホークスの選手から祝福を受け、大きな話題になったこともあった。キャンベルの父親はカリフォルニア大学野球部からドラフトでMLBのフィラデルフィア・フィリーズに入団した大リーガーだった。

一流アスリートのDNAを持つと言われ、鳴り物入りでPGAツアーにデビューしたキャンベルだが、あえなくシード落ちして下部ツアーへ。優勝争いには何度も絡んだが、勝利には一度も手が届かなかった。それでも諦めず、昨季のコーンフェリーツアーでトップ30入り(7位)となり、今季のPGAツアー出場資格を手に入れた。

今大会最終日もチャンスどころのパットを何度も外し、またしても惜敗かと思われる場面は多々あった。しかし、ネバーギブアップの精神で、これまで10年、辛抱強く戦ってきたキャンベルに、今週は勝利の女神がついに微笑んだということなのだろう。

プレーオフ2ホール目の18番(パー5)。大きく右に出たキャンベルのティショットは、OBになるはずが、木に跳ね返って右ラフへ。芝が剥げかかったベアグラウンド状だったが、ライはさておき、インバウンドとなったのは奇跡的だった。

「ラッキー・バウンドは、ありがたかった」

レイアップ後の3打目をピン1メートルにピタリと付け、バーディパットがウイニングパットになった。

キャンベルの「勝利の一打」を目にして、競い合っていたポトギーターが拍手を贈り、彼のキャディもサムアップで讃えた場面が印象的だった。サドンデス・プレーオフ開始の際も、18番ティで進んで握手やグータッチを交わしたポットギーターからは、スポーツマンシップが溢れ出ていて爽やかだった。

ポットギーターも昨季のコーンフェリーツアーのトップ30(29位)の資格で今季のPGAツアーにデビューした1人。車の運転ができない年齢のときからジュニアやアマチュアとして世界各国で転戦していたため、当時も、そして今も、常に父親が同伴している。

サドンデス・プレーオフが始まると、ポットギーターの父親とキャンベルの彼女が並んで立って、それぞれ息子と彼氏を応援していた姿が、これまた印象的だった。

ポットギーターの父親とキャンベルの彼女は、プレーオフでは「敵どうし」だが、コーンフェリーツアー時代から毎週のように顔を合わせてきた知り合いで、お互い、勝利を追い求める戦士を支える同士という感覚なのではないだろうか。

今週は「初優勝」の三文字の“重さ”を痛感させられ、重いからこそ、達成されたときの喜びは何にも代えがたいことを再確認させられた大会だった。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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