PGAツアーは今週から『フェデックスカップ・フォール』が始まった。その第1戦となった「フォーティネット選手権」はカリフォルニア州ナパ近郊のシルベラードリゾートで開催され、25歳の米国人選手、サヒス・ティーガラ(米国)が初優勝を挙げた。
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親子3人感無量、「みんなで挙げた」初優勝【舩越園子コラム】
サヒス・ティーガラ(米国)が地元の大声援を受けながら躍動し、74戦目にしてうれしいツアー初優勝を掴んだ。
配信日時:2023年9月18日 03時21分
PGAツアーは今週から『フェデックスカップ・フォール』が始まった。その第1戦となった「フォーティネット選手権」はカリフォルニア州ナパ近郊のシルベラードリゾートで開催され、25歳の米国人選手、サヒス・ティーガラ(米国)が初優勝を挙げた。
2日目に「64」をマークして首位タイに躍り出たティーガラは、3日目も「67」と好調を維持し、単独首位へ浮上。最終日は出だしからバーディ発進し、アグレシッブなプレーでスコアを伸ばしていった。
途中、2ボギーを喫したものの、7つのバーディーを奪い、2位との差を3打、4打と広げながら快走。最終18番は深いラフにつかまり、ボギー・フィニッシュとなったが、それでも2位に2打差の通算21アンダーで堂々の勝利。初優勝がかかっていたとは思えないほどの落ち着いたプレーぶりが、何より印象的だった。
フォーティネット選手権を皮切りに7つの大会で構成される『フェデックスカップ・フォール』では、フェデックスカップ・ランキングでトップ50入りしてプレーオフ・シリーズ第2戦の「BMW選手権」に出場した選手たちのランキングは、「トップ50」という括りで固定されたままとなる。
それでも今大会に出場していたのは、大会3連覇がかかっていたマックス・ホーマ(米国)など6名しかおらず、そのうちの一人がティーガラだった。
もはや彼らは、このフォールの7試合で優勝しようとも予選落ちしようとも、フェデックスカップ・ランキングが動くことはなく、来季のシグネチャー・イベントなどへの出場は、すでに保証されている。
「それなのに、なぜフォーティネット選手権に出ているのですか?」
開幕前、そう尋ねられたティーガラは「それは、決していい質問ではないですよね」と前置きした上で、こう答えた。
「友人知人がいっぱいいる故郷の大会。子供のころから慣れ親しんできた大好きなポアナ芝。そして、BMW選手権後、僕は3週間も試合に出られず、うずうずしていた。僕が現役である限り、1カ月以上のオフを取ることは決してない。僕はゴルフ中毒だからね」
ティーガラはBMW選手権終了後のフェデックスカップ・ランキングが31位となり、トップ30に限定される最終戦の「ツアー選手権」への進出が、ぎりぎりで叶わなかった。
その悔しさが、試合に出られなかった間のティーガラの戦意をそれまで以上に膨らませ、満を持して迎えた今大会では初優勝に向かって一心不乱に突き進んだ。
全米でも屈指の高額な学費で知られるロサンゼルスのペパーダイン大学出身。経済的には恵まれていた様子だが、ジュニア時代から両親の献身的なサポートを受け、文字通り、「父と母に育てられてきた」という。
2020年にプロ転向。2021年に下部ツアーのコーン・フェリーツアーでトップ25入りを果たし、2022年からPGAツアー参戦を開始した。
ルーキーイヤーの2022年、1月の「ファーマーズ・インシュランス・オープン」に推薦出場が叶った際、「来月のフェニックス・オープンからも推薦出場をいただいた。本当にありがたい」と、父親が涙ながらに語っていた姿が思い出される。
その「WMフェニックス・オープン」では優勝争いに絡み、1打差の3位タイに食い込んだ。今季も何度か勝利を感じながら戦い、トップ10に7度も入ったが、初優勝は近そうで遠い存在となっていた。
今週、その距離を一気に縮め、勝利を飾ることができたことは、戦いたくても戦えなかった3週間の悔しさによって高められた戦意と、最近では珍しく、ドライビング・アイアンで右へ左へと自在に打ち分ける高度な技術力の賜物。
そして、両親や恋人、友人知人など、会場へ駆けつけた総勢35名の“ティーガラ応援団”、さらには地元の大勢のギャラリーの熱い声援のおかげだった。
「今週、一体、何人のギャラリーが僕を応援してくれていたのだろうか? 僕は、もちろん目の前のショット、パットに集中していたけど、とにかく拍手と声援がすごくて、それが何より力になった。この優勝は僕だけの力ではない。チームのおかげ、みんなのおかげで挙げることができた初優勝です」
マイクを向けられた父親は、感動しすぎて次々に言葉が溢れ続け、ついに見かねた母親が遮り、「息子はとにかく勤勉なゴルファーなんです」という短い一言で締め括った。
そんな和やかな光景を息子ティーガラはうれしそうに眺めていた。そんな親子3人の幸せいっぱいの姿を眺めていたゴルフファンは、幸福感をお裾分けしてもらった気分を味わえたのではないだろうか。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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