PGAツアーの今季2つ目のシグネチャー・イベント「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」は、北アイルランド出身の35歳、ローリー・マキロイが通算27勝目を挙げて幕を閉じた。
マキロイは同郷で無二の親友であるシェーン・ローリー(アイルランド)とともに、首位から1打差の2位タイで最終日を迎え、最終組でプレーした。
3日目のラウンド後、「今年はミスを最小限に抑えることが目標。ボギーフリーのゴルフを目指したい」と語っていたマキロイは、最終日は2番と7番でバーディを先行させたが、8番では寄せワンに失敗し、ボギーを喫した。
しかし、後半は10番のバーディーから一気に勢いづき、12番で再びバーディ、14番ではイーグル、15番でもバーディ奪取。ロングショットもグリーン周りもグリーン上も、ほぼノーミスに近いゴルフを披露し、勝利ににじり寄っていった。
それでも上がり数ホールは「いろいろな可能性を考えた」というマキロイは、最後まで気を抜かず、2位に3打差で迎えた18番(パー5)は手堅くパーで収めて勝利した。
これまでメジャー4勝を含む26勝を挙げてきたマキロイだが、勝利を目前にして崩れて負けた経験は少なくない。「詰めが甘い」と批判されること、しばしばで、昨年の全米オープン惜敗は、その典型だった。
だからこそ、今年はミスを最小限に抑えることを何より目指したいと考えているのだろう。この日の唯一のボギーとなった8番は「とても残念だった」。しかし、ゾーンに入った状態だった後半のゴルフは、彼が悔やんだボギーを補って余りある見事なプレーぶり。そして、圧巻の勝ちっぷりだった。
マキロイは米国の「ウエストコーストでは成績が振るわない」「勝てない」と言われて久しい。西海岸での優勝は2015年5月の「WGC-キャデラック・マッチプレー選手権」のみで、シーズン序盤の西海岸シリーズで優勝したことは、これまでは一度もなかった。だが、今年はPGAツアーにおける自身の今季初戦となった今大会で、いきなり勝利。
「シーズンはじめのこの時期に、グッドスタートができて、とてもうれしい」
この時期に「勝てた」ではなく「グッドスタートができた」と言ったのは、4月の「マスターズ」へと続く流れを意識し、今大会の優勝が“スタート”となって、マスターズでの悲願の優勝を達成して“ゴールインしたい”と望んでいるからに違いない。
メジャー4勝の実績を誇るマキロイだが、最後に挙げたメジャー優勝は2014年8月の「全米プロ」だ。あの年、マキロイは7月の「全英オープン」を制すると、すぐさま8月に「WGC-ブリヂストン招待」でも勝利。そして全米プロでも勝利を挙げて、出場3試合連続優勝を達成し、その強さを世界に見せつけた。
しかし、その後はメジャー優勝からは遠ざかり、すでに「十年一昔」が経過している。
PGAツアーの年間王者には、すでに3度(16年、19年、22年)も輝き、世界ランキングは現在3位。PGAツアーの選手が欲するものの多くを掌中に収めてきたマキロイだが、そんな彼が何より手に入れたいのは、マスターズでの勝利、そしてキャリア・グランドスラム達成だ。
2011年に一度はグリーンジャケットを羽織りかけ、しかし、後半に大崩れしたマスターズは、だからこそ、マキロイにとっては、トラウマ化して勝つことが難しくなっているのかもしれない。
しかし、だからこそ勝ってほしいとファンは願い、マキロイ自身も「だからこそ勝ちたい」と心の底から切望している。今年こそ、その悲願が達成されるのではないか。ペブルビーチで堂々たる勝利を挙げたこの日のマキロイを目にしたら、そんな期待が大きく膨らんだ。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)