パリ五輪の男子ゴルフ競技は8月1日(木)から行われる。前回、ザンダー・シャウフェレ(米国)が金メダルを獲得した2021年の東京五輪を振り返る。
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コロナ禍により史上初の延期、無観客で行われた東京五輪。霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)を舞台に行われ、松山英樹と星野陸也が日本代表として出場した。3日目を終えた時点でシャウフェレは、トータル14アンダーで単独首位に立っていた。1打差の2位に松山、2打差の3位タイにはポール・ケーシー(イングランド)とカルロス・オルティス(メキシコ)が続いていた。
前半こそ順調にスコアを伸ばしていったシャウェレだったが、後半でピンチが訪れる。14番でティショットを大きく右に曲げて、茂みの中へ打ち込んだ。生い茂る木をくぐっていくと、幸いにもボールを確認。「これが今日で一番ラッキーだった。あれがなかったら、今ここに立っていないと思う」とアンプレヤブルを宣言。ドロップして3打目を放ち、なんとか5打目でグリーンに乗せると、1パットのボギーで納めてトップの座を守り抜いた。
ローリー・サバティー二(スロバキア)と首位タイに並んで迎えた17番。ここでバーディを獲ってひとつ抜け出し、金メダルが目前に迫った。最終ホールのティショットも大きく右に曲げたが、3打目で1.2メートルほどに乗せてパーセーブ。「入れた瞬間、肩の荷が下りた」と、ほっと息をついて勝利をかみしめた。
母は日本育ちの台湾人、祖父母が東京在住と日本とは由縁のあるシャウフェレ。父はかつて陸上の十種競技で五輪出場を目指していたが、飲酒運転のドライバーによる交通事故に巻き込まれ選手生命を絶たれていた。「ウィニングパットを決めたときに父の顔が浮かんだ。父の思いも報われたと思う。一緒に分かち合えてうれしい」。18番グリーンで受け取った金メダルを、表彰台の一番上で父のために掲げて見せた。
今年のシャウフェレは「全米プロ」、「全英オープン」とメジャー2勝を挙げており絶好調。連覇に期待がかかる。