PGAツアー通算8勝のビリー・ホーシェル(米国)と妻のブリタニー・ネルソンさんが、2025年の“ディーン・ビーマン・アワード”を受賞した。授賞式は21日、PGAツアー本部があるフロリダ州ポンテ・ベドラ・ビーチのTPCソーグラスで行われた。
この賞は、プロゴルファーとして「社会をより良くするための無私の貢献」を称えるもので、コース外での活動が評価される。
ホーシェル夫妻は、地元フロリダ州でのチャリティ活動が高く評価された。食糧支援団体“フィーディング・ノースイーストフロリダ”、退役軍人に介助犬を派遣する“K9sフォー・ウォリアーズ”、ジュニアゴルフの発展を支援するAJGAへの貢献が認められた。また、2023年には“ホーシェル・ファミリー財団”を立ち上げ、メンタルヘルス支援にも取り組んでいる。
授賞式で86歳のビーマンからカップを手渡されると、「言葉にならない。こんな幸せなことはない」と喜びを語った。「ディーンはこのスポーツの象徴。ディーンがいなければ、私はこの素晴らしいゴルフゲームをプレーし、このコミュニティに恩返しすることもできなかった。彼は信じられないようなツアーを作り上げ、何十年にもわたる成功の礎を築いた」と感動を言葉にした。
元プロゴルファーのディーン・ビーマン(米国)は、第2代コミッショナーとしてPGAツアーを大きく成長、発展させたことで知られている。「ザ・プレーヤーズ選手権」のコンセプトを導入し、全米各地のコースからなるTPC(トーナメント・プレーヤーズ・クラブ)のネットワークを構築。ツアーを非営利団体(ノン・プロフィット)に転換し、プレーヤー向けの年金制度を導入するなど、数々の改革を実施した。
さらに、すべてのトーナメントにチャリティ活動を義務付ける方針を打ち出した。1974年には年間100万ドル(約1億5000万円)だったツアーのチャリティ基金が、1994年には3000万ドル(約45億円)超に成長。1980年にはシニアPGAツアー(現PGAツア・ーチャンピオンズ)を、1990年には若手育成を目的として、下部のベン・ホーガン・ツアー(現コーン・フェリーツアー)を設立した。
TPCソーグラスには“1ドルの小切手”にまつわる逸話がある。ビーマンはコース建設のため、ポンテ・ベドラ・ビーチの荒地をたった1ドルで購入。コース設計の鬼才、ピート・ダイとともに、現在の名門TPCソーグラスを生み出した。この1ドルの小切手は、クラブハウスに今も飾られている。(文・武川玲子=米国在住)