<Sky レディースABC杯 初日◇24日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6645ヤード・パー72>
好事魔多しの“池ぽちゃボギー”を悔しがったが、顔は笑っていた。日増しに深まる復活の手ごたえ。ツアー13勝を誇る成田美寿々が「67」で回り、首位と2打差の5位で滑り出した。
「最近、最終ホールでやらかすんですよね。イーグルを取るつもりで、池なんて見ていなかったんですけど」
ピン手前3.5メートルを沈めた1番からの2連続など前半のアウトだけで5バーディのロケットスタートで飛び出した。後半もパー3の12番でバーディ。この日の平均ストロークが「4.625」と最も易しいホールとなったパー5の18番で首位に並んでホールアウトする計算だった。だが、フェアウェイ真ん中の絶好の位置からの残り185ヤードの2打目は「クラブが下から入ってしまって…。めちゃくちゃダフってしまいました」とグリーン手前の池にダイレクトで飛び込んでしまった。
頭の中ではイーグルフィニッシュを描いていたが、まさかのボギー。それでも、口調が滑らかなのはショットに本来の切れ味が戻ってきたからだ。「バーディがだいぶ取れるようになってきて、60台のゴルフができるようになってきた。きょうは、そんなに調子がいいわけじゃなかったけど、それでもこのスコアで回れた、自信になりますね」。4週前のレギュラーツアー「ゴルフ5レディス」の初日に4バーディ・ボギーなしの「68」で回り、先週はステップの「中国新聞ちゅーピーレディースカップ」の2日目にも「68」をマークした。
極度の不振に陥り、2022年11月に無期限休養を宣言し、昨年は6月のレギュラーツアー「リシャール・ミル ヨネックスレディス」の1試合だけに出場。復活を目指して、今年4月のステップ開幕戦で復帰した当初は弱気発言も多かったが、戦う姿勢を取り戻した今は強かったころの攻撃的なゴルフと力強い言葉が戻ってきた。
今季のステップ・アップ・ツアーは初めてリランキングが実施され、今大会終了後に確定する。今季優勝者、昨年のプロテスト合格者とファイナルQT(最終予選会)進出者を除いた選手が対象となり、成田の暫定リランキングは45位。来週以降の今季残り7試合に出場するには同50位以内が目安となるだけに、「めちゃくちゃ気になります」と力はいつも以上に入っている。
今大会はステップ唯一の4日間大会で賞金総額4000万円、優勝賞金720万円はともに今季最高額。ポイントで争うレギュラーツアーとは異なり、賞金ランキング(明治安田ステップ・ランキング)で争う。下位の選手にも逆転の可能性は大いにあるが、「QT前に試合がなくなるのは避けたい。今週、しっかり稼いで順位をキープしたい」と実力者に油断はまったくない。
今季も終盤戦に入り、来季のことを自然と考える。レギュラーツアーは9試合に出て、予選通過は2試合だけ。メルセデス・ランキングは140位と現状はQTからの“職場確保”を目指すことになるが、10月の「富士通レディース」に主催者推薦での出場が決まっており、「一発逆転をぶちかますのはそこしかない。地元の千葉だし、優勝もしている大会だから」と完全復活となる5年ぶりの優勝も見据えている。
「そのためにも今週、しっかり頑張りたい。60台を続けて出すことですね」。まずはステップでのリランキングをクリア。その先も見据えて、10月8日に32歳となるベテランが残り3日間に挑む。(文・臼杵孝志)