ミズノ『ST-X』ドライバー投入の西郷真央、+20yの衝撃。もう1機種『ST-Z』も、なぜ飛ぶのか?
2021年の国内女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」初日。ミズノ契約の西郷真央がド派手なスタートを決めました。新兵器の投入も関連しそうなこの話題、掘り下げる必要がありそうです。
配信日時:2021年3月8日 06時30分
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『ST-X』✕西郷真央 「当たれば+20、外しても+10y」
西郷真央、開幕戦初日、2位に3打差をつける8アンダー発進。前半「30」、最終ホールのイーグル締め。圧巻のロケットスタートに、ただただ驚くしかなかった。筆者は同じジャンボ尾崎門下生であり、昨季メジャー2勝で同じ『ST-X』ドライバーを投入した、原英莉花の方に注目していたからだ。
契約フリーも続々『JPX921』にスイッチ。原英莉花を含む、ミズノ使用者の新兵器は?
これまで、西郷真央の具体的な飛距離のイメージはなかった。昨季がプロとしてのデビューイヤーだったが、御存知の通り、新型コロナウイルスの影響などもあり、JLPGAはドライビングディスタンスの計測スタッツを見送らざるを得ない状況だったからだ。西郷は、スタートホールから目の醒めるようなドライバーショットを何度も披露、初日を終えてこう話す。
「昨季感じた大きな課題はショートゲーム。特にグリーン周りです。練習場よりも、やはりラウンドを多くしなければなりません。今年は週に2R必ずプレーするようにしました。少し前のラウンドから飛距離アップが分かるようになりました。ヘッドの芯に当たれば20ヤード、そうでなくても10ヤードはアップしたと思います」(西郷真央)
オフの間、週に一度のチューブトレーニングを導入したそうだが、その影響もあるだろう。だが、筆者としては、ミズノの追加機種『ST-X』ドライバーの影響も疑わざるを得ない。何しろ、開幕前に同じ『ST-X』を投入予定だった原英莉花もその実感を次のように語っていたからだ。
契約フリーも続々『JPX921』にスイッチ。原英莉花を含む、ミズノ使用者の新兵器は?
これまで、西郷真央の具体的な飛距離のイメージはなかった。昨季がプロとしてのデビューイヤーだったが、御存知の通り、新型コロナウイルスの影響などもあり、JLPGAはドライビングディスタンスの計測スタッツを見送らざるを得ない状況だったからだ。西郷は、スタートホールから目の醒めるようなドライバーショットを何度も披露、初日を終えてこう話す。
「昨季感じた大きな課題はショートゲーム。特にグリーン周りです。練習場よりも、やはりラウンドを多くしなければなりません。今年は週に2R必ずプレーするようにしました。少し前のラウンドから飛距離アップが分かるようになりました。ヘッドの芯に当たれば20ヤード、そうでなくても10ヤードはアップしたと思います」(西郷真央)
オフの間、週に一度のチューブトレーニングを導入したそうだが、その影響もあるだろう。だが、筆者としては、ミズノの追加機種『ST-X』ドライバーの影響も疑わざるを得ない。何しろ、開幕前に同じ『ST-X』を投入予定だった原英莉花もその実感を次のように語っていたからだ。
『ST-X』投入の原英莉花 「理想の回転数の理想のドロー」
「今回の『ST-X』ドライバー、凄くいいんですよ。めっちゃいい。音と打感もいいんですけど、ヘッドが少し大きくなって、去年の『ST-200X』では球が少し高めになっていたんですけど、それが抑えられてて、理想の回転数で飛んでいってくれるなって。理想のドローボールが打てるようになってきてます。7000ヤードで回っていても普通に(2打目は)アイアンで回れていますし、初速が速く出てる感じがします」(原英莉花)
ミズノの新作1Wを試打した契約プロ8人の“第一印象”は「くっついて、芯が広い」
原はこの時点では、飛距離性能を具体的に言及しなかった。「他の選手と回る中で、初めて判断できると思うので」と話すに留めていたが、実際、昨年よりもランが増え、スピン量減を感じていた。加えて、「ミスした時に右に滑っていくんじゃなくて、そのままドローがかからず、真っすぐ飛んでいく感じで残ってくれます」と話していた。
つまり、打点を外した際、フェースが少し開くようなミスでも、直進性を保てていると。昨季の最終戦「リコーカップ」で投入即メジャー制覇した『ST-200X』ドライバーよりも、『ST-X』は【1】低スピン性能、【2】寛容性、【3】直進性が増したことを実感していた。
この原のコメントは、筆者には納得感が強かった。事前にミズノから説明を受けていた『ST-X』の性能説明とまさに符号しており、細かな設計の狙いが見事にハマっていることが推察できた。その一部である、製品設計の詳細を紹介しよう。
ミズノの新作1Wを試打した契約プロ8人の“第一印象”は「くっついて、芯が広い」
原はこの時点では、飛距離性能を具体的に言及しなかった。「他の選手と回る中で、初めて判断できると思うので」と話すに留めていたが、実際、昨年よりもランが増え、スピン量減を感じていた。加えて、「ミスした時に右に滑っていくんじゃなくて、そのままドローがかからず、真っすぐ飛んでいく感じで残ってくれます」と話していた。
つまり、打点を外した際、フェースが少し開くようなミスでも、直進性を保てていると。昨季の最終戦「リコーカップ」で投入即メジャー制覇した『ST-200X』ドライバーよりも、『ST-X』は【1】低スピン性能、【2】寛容性、【3】直進性が増したことを実感していた。
この原のコメントは、筆者には納得感が強かった。事前にミズノから説明を受けていた『ST-X』の性能説明とまさに符号しており、細かな設計の狙いが見事にハマっていることが推察できた。その一部である、製品設計の詳細を紹介しよう。
なぜ、『ST-200』と『ST-200X』に、追加2機種が必要なのか?
今更の説明になるが、『ST』シリーズの成り立ちを振り返りたい。『ST』とは【Speed Technology】の略で、グローバル戦略モデルとして企画され、PGAツアー選手が使用するモデルが逆流する形で昨年日本へと入ってきた。『ST-200』シリーズの前に、実は海外で『ST-190』『ST-180』シリーズが展開されている。
いずれも『Mizuno Pro』から入った、高反発素材【βチタン】フェースを採用するため、【高初速+低スピン】は共通。中でも現行の『ST-200』は、フェース角がオープンで左に行かないのに対し、原英莉花、時松隆光、小鯛竜也らが使用した『ST-200X』は、若干のフックフェースでつかまりのいいモデルとなっていた。つまり、2つは【つかまり具合】という点で、両極に位置している。
いずれも『Mizuno Pro』から入った、高反発素材【βチタン】フェースを採用するため、【高初速+低スピン】は共通。中でも現行の『ST-200』は、フェース角がオープンで左に行かないのに対し、原英莉花、時松隆光、小鯛竜也らが使用した『ST-200X』は、若干のフックフェースでつかまりのいいモデルとなっていた。つまり、2つは【つかまり具合】という点で、両極に位置している。
対して、今回追加される『ST-X』は評価の高い『ST-200X』をスクエア顔に変え、【高初速+低スピン+つかまり】を標榜して短い重心距離化が図られた。
かたや、『ST-Z』は『ST-200』より重心距離が短くなり、【高初速+低スピン+安定性】を狙って深重心化が図られた。その違いは、ソールに加わった軽量のカーボン位置でひと目で分かる。
かたや、『ST-Z』は『ST-200』より重心距離が短くなり、【高初速+低スピン+安定性】を狙って深重心化が図られた。その違いは、ソールに加わった軽量のカーボン位置でひと目で分かる。
重心距離を短く、下げたい『ST-X』は、ソールのトゥ側を大きくくり抜き、軽量のカーボンを使用。深・低重心化、高慣性モーメント化を狙いたい『ST-Z』は、トゥとヒールの2箇所をカーボンに置き換え、バック部にウェイトを配置した。また、両機種とも『ST-200』シリーズよりフェース下部を薄くし、下目に当たっても初速が出るようになっている。
ミズノ史上、最も【低スピン】!?
筆者が最も驚いたのが、『ST-X』『ST-Z』の【低重心率】の低さだった。これは『Mizuno Pro MODEL-E』を打ったことがある人なら、実感しているだろうが、非常にスピン量が多かった記憶がある。高反発ドライバーに使用される禁断の素材【βチタン】フェースで高初速は出るのだが、スピン量が元々多い人には、ランが稼ぎづらかった。
原英莉花が昨年終盤まで長く使用していた『Mizuno Pro』に対して、昨年のリコーカップで使用した『ST-200X』は、カーボンクラウンになって約10%も低重心率が下がっていた。>しかも、今作『ST-X』はというと、さらに約3.5%も下がっている。原が「ランが増えたし、直進性が増した」と実感するのも当然だと思う。
原英莉花が昨年終盤まで長く使用していた『Mizuno Pro』に対して、昨年のリコーカップで使用した『ST-200X』は、カーボンクラウンになって約10%も低重心率が下がっていた。>しかも、今作『ST-X』はというと、さらに約3.5%も下がっている。原が「ランが増えたし、直進性が増した」と実感するのも当然だと思う。
また、『ST-200』に対して、『ST-Z』も約5%低重心率が下がっている。どおりで、キース・ミッチェルが『ST-Z』を投入していきなり飛距離を伸ばすわけである。
▶ミズノの新作、爆飛び!?『ST-Z』の投入でキース・ミッチェルが平均326.1ヤード!
普段、「トラックマン」や「GCクワッド」、「フライトスコープ」を使用して弾道計測する人には当たり前のことだが、同じボール初速でも、【3000rpm】と【2000rpm】ではトータル飛距離が10〜20ヤード伸びることはザラにある。いや、インパクト条件によってはそれ以上の差が出てもおかしくない。
ミズノの場合、その高価かつ希少性から他社が真似しづらい「βチタン」フェースで高初速を得られる。しかも、元々高重心モデルが多く、スピンがしっかり入るモデルも多かったため、【高初速+低スピン+●●●】を追求すればするほど飛距離が伸びるのは当然と言えるのだ。
▶ミズノの新作、爆飛び!?『ST-Z』の投入でキース・ミッチェルが平均326.1ヤード!
普段、「トラックマン」や「GCクワッド」、「フライトスコープ」を使用して弾道計測する人には当たり前のことだが、同じボール初速でも、【3000rpm】と【2000rpm】ではトータル飛距離が10〜20ヤード伸びることはザラにある。いや、インパクト条件によってはそれ以上の差が出てもおかしくない。
ミズノの場合、その高価かつ希少性から他社が真似しづらい「βチタン」フェースで高初速を得られる。しかも、元々高重心モデルが多く、スピンがしっかり入るモデルも多かったため、【高初速+低スピン+●●●】を追求すればするほど飛距離が伸びるのは当然と言えるのだ。
他社の最新ドライバーをぶっちぎる!?
この背景を知っていた筆者にとって、西郷真央や原英莉花の語ることは、当然そうなるべきストーリーとして、腑に落ちる結果だった。もう一つ、確信を持てた理由は、アマチュア試打の圧倒的な結果である。
GNTVの「おっさんず試打」で、HS42〜43m/sの片岡、HS45〜46m/sの田辺のコンビがずっと最新ドライバーを試打してきたが、これまでの最高飛距離を『ST-Z』が更新した。2人ともHS、スイングタイプも異なるが、ボールも計測器も常に同条件でテストしている。
これまでの記録は、田辺、片岡ともに自身のエースシャフトを挿した状態で、田辺がタイトリスト『TSi3』、片岡がキャロウェイ『MAVRIK』がこれまでの最長距離を記録していたが、『ST-Z』は純正シャフト装着にもかかわらず、あっさりと過去最高を叩き出した。エースシャフトを挿せばどうなってしまうのだろう……。
やはり、飛びの三要素「ボール初速・スピン量・打ち出し角」が最適化すると、自ずと飛距離は伸びる。ミズノが追求した【高初速+低スピン+つかまり】の『ST-X』、【高初速+低スピン+安定】の『ST-Z』は、ムダなスピンで飛距離ロスしている人には必見の性能を持っている。
Text/Mikiro Nagaoka
やはり、飛びの三要素「ボール初速・スピン量・打ち出し角」が最適化すると、自ずと飛距離は伸びる。ミズノが追求した【高初速+低スピン+つかまり】の『ST-X』、【高初速+低スピン+安定】の『ST-Z』は、ムダなスピンで飛距離ロスしている人には必見の性能を持っている。
Text/Mikiro Nagaoka