【記者の目】契約フリーを楽しみ尽くしたアン・ソンジュ「賞金女王を取れたのはクラブのおかげ」
【記者の目】契約フリーを楽しみ尽くしたアン・ソンジュ「賞金女王を取れたのはクラブのおかげ」
配信日時:2018年11月20日 03時12分
先週に行われた「大王製紙エリエールレディス」で4年ぶり、4度目の賞金女王のタイトルを手に入れたアン・ソンジュ。今季はクラブ契約フリーの立場でシーズンに入り、ことあるごとに「いろんなクラブを試すことが楽しい!」と笑顔で語っていたが、この試合では重圧に苛まれていた。
「今年のテーマは楽しくいきましょう!です。目標通りに先週までは賞金女王は一切意識していなかったのですが、今週は気にしないようにしても意識してしまった。ジエは去年ここで勝っているので、ジエのスコアばかり気になっていた。正直に言って寝られなかったし、食べられなかった。つらかった」(アン・ソンジュ)
■「賞金女王はクラブのおかげ」。合ってなくても楽しく切り替えられる
そんな中、シーズン5勝を挙げる活躍で賞金女王を決めた。一番の理由は何なのか?「周りが楽しくできるような環境を作ってくれた」など様々な要素があるが、本人が真っ先に挙げたのが【クラブ契約フリーにしたこと】だ。
「いろいろなメーカーのクラブを試せる。もし、これが自分に合っていなくても、道具を切り替えられる。気持ちまで変わります。賞金女王をとれたのはクラブのおかげ。支えてくれた方だけではなく、(使用した)クラブにも感謝をしています」(アン・ソンジュ)
中でも軸になっていたのは、『ミズノプロ518』アイアンだ。これだけは開幕から最後まで不変。「今年から使い始めた『ミズノプロ518』ですが、本当に打った感触が良く、思った通りの球が打てる。ツアーを戦う中で大きな支えになりました」と、ウッド関係とはまったく別次元の信頼を置いていた。
様々なメーカーのクラブを試せたことで「FWキープも良くなっていたし、パーオン率も上がった」と、スタッツにも表れているとおりの影響を実感。春先からキャロウェイを軸にして、シャフトの軽量・長尺化を図って飛距離を伸ばす。その後はさらなる安定性を求めてシャフトを様々に交換、スペックを替える度に強くなった。
実際、ドライバーは実に5モデルものヘッド(ローグサブゼロ、ローグ、RS-F、EZONE GT、G400LST)を試して、今季5勝のドライバーのスペックは下記のようにすべて異なる。「マスターズGCレディス」では初日のハーフ「30」を記録したヘッドを翌日替えるなど、日替わりすら当たり前というほどだ。(普通のプロなら考えづらいケース)
1勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(10.5°クロカゲXD50 SR、45.5インチ)
2勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(9°エボIV 474 S、46.25インチ)
3勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(9°ツアーAD TP-4S、46.5インチ)
4勝目 キャロウェイ ローグ(9°ツアーAD TP-4S、46.5インチ)
5勝目 PING G400LST(8.5°ツアーAD TP-5S、46.75インチ)
■日替わりでクラブを替えてでも、切り替えてさらに上を目指す
「自分にとって色々なクラブを使うことはとても楽しみでした。前のクラブが悪いわけでなく、契約をフリーにしたことでモチベーションがアップしたことや、気持ちの切り替えができるようになったことも大きいです」。日替わりすら断行するのは、クラブを替えることで「さらに高みを目指す」という気持ちの切り替えのため。前向きさ、貪欲さの表れだった。
契約フリーの実力者には、次々とメーカーから新しいクラブが舞い込む。だが、この立場にはリスクもある。【自分に合うクラブを見抜く目】に乏しい選手には、選択肢が増えることが逆に仇となり、正解が分からず迷路にハマり込んでスイングの調子が崩れるリスクもある。
アンはそのことをよく理解した上で、【合わなければすぐやめて次を探す】シンプルな考えで、【自分とクラブの相性】を見極めることに徹していた。使用ヘッドの個数がかさむのはそのためで、この姿勢こそが、正しいクラブ契約フリー選手のあり方なのだろう。
並の選手なら「クラブを替えまくると調子を崩す」リスクと捉えるのも無理がない。ところが、アンはそのことをよく理解した上で、プロセスを決して間違えずに、楽しみ、さらなる上昇のためのモチベーションにすら変えていた。
「4年前よりも、私のゴルフは成長していると思います。以前は結果優先。前ばかりをみて、イケイケという感じ。でも今年は特に、調子がいまひとつの時、今の自分を最大限に活かすにはどうしたら良いか。試合の各日、できることを精いっぱいやりました」。
過去3回の賞金女王の際は、「飛距離が結構出たし怖さがない、そんな感じでした。でも今はそうはいきません」と頭を振る。今年の賞金女王戴冠は勢いではなく、飛距離を道具で補い、マネジメントと流れを意識して、自分自身との戦いに勝てたことだと語る。
「最も注意することは、ゲームに徹すること。コースマネジメントをしっかりと行い、勝負の流れを的確につかむ。流れを途切れさせないようにしている。目前の相手と戦うのではなく、自分との戦いに徹しました」と、この考えで得たものは大きい。
過去は「賞金女王をとった次の年の目標が立てづらかった」と語るが、今は違う。あと2勝に迫る永久シード(通算30勝)を見据えて、歩みを止めるつもりはない。アン・ソンジュ、来季もクラブ契約フリーの立場を継続することは濃厚である。
Text/Mikiro Nagaoka
「今年のテーマは楽しくいきましょう!です。目標通りに先週までは賞金女王は一切意識していなかったのですが、今週は気にしないようにしても意識してしまった。ジエは去年ここで勝っているので、ジエのスコアばかり気になっていた。正直に言って寝られなかったし、食べられなかった。つらかった」(アン・ソンジュ)
■「賞金女王はクラブのおかげ」。合ってなくても楽しく切り替えられる
そんな中、シーズン5勝を挙げる活躍で賞金女王を決めた。一番の理由は何なのか?「周りが楽しくできるような環境を作ってくれた」など様々な要素があるが、本人が真っ先に挙げたのが【クラブ契約フリーにしたこと】だ。
「いろいろなメーカーのクラブを試せる。もし、これが自分に合っていなくても、道具を切り替えられる。気持ちまで変わります。賞金女王をとれたのはクラブのおかげ。支えてくれた方だけではなく、(使用した)クラブにも感謝をしています」(アン・ソンジュ)
中でも軸になっていたのは、『ミズノプロ518』アイアンだ。これだけは開幕から最後まで不変。「今年から使い始めた『ミズノプロ518』ですが、本当に打った感触が良く、思った通りの球が打てる。ツアーを戦う中で大きな支えになりました」と、ウッド関係とはまったく別次元の信頼を置いていた。
様々なメーカーのクラブを試せたことで「FWキープも良くなっていたし、パーオン率も上がった」と、スタッツにも表れているとおりの影響を実感。春先からキャロウェイを軸にして、シャフトの軽量・長尺化を図って飛距離を伸ばす。その後はさらなる安定性を求めてシャフトを様々に交換、スペックを替える度に強くなった。
実際、ドライバーは実に5モデルものヘッド(ローグサブゼロ、ローグ、RS-F、EZONE GT、G400LST)を試して、今季5勝のドライバーのスペックは下記のようにすべて異なる。「マスターズGCレディス」では初日のハーフ「30」を記録したヘッドを翌日替えるなど、日替わりすら当たり前というほどだ。(普通のプロなら考えづらいケース)
1勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(10.5°クロカゲXD50 SR、45.5インチ)
2勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(9°エボIV 474 S、46.25インチ)
3勝目 キャロウェイ ローグサブゼロ(9°ツアーAD TP-4S、46.5インチ)
4勝目 キャロウェイ ローグ(9°ツアーAD TP-4S、46.5インチ)
5勝目 PING G400LST(8.5°ツアーAD TP-5S、46.75インチ)
■日替わりでクラブを替えてでも、切り替えてさらに上を目指す
「自分にとって色々なクラブを使うことはとても楽しみでした。前のクラブが悪いわけでなく、契約をフリーにしたことでモチベーションがアップしたことや、気持ちの切り替えができるようになったことも大きいです」。日替わりすら断行するのは、クラブを替えることで「さらに高みを目指す」という気持ちの切り替えのため。前向きさ、貪欲さの表れだった。
契約フリーの実力者には、次々とメーカーから新しいクラブが舞い込む。だが、この立場にはリスクもある。【自分に合うクラブを見抜く目】に乏しい選手には、選択肢が増えることが逆に仇となり、正解が分からず迷路にハマり込んでスイングの調子が崩れるリスクもある。
アンはそのことをよく理解した上で、【合わなければすぐやめて次を探す】シンプルな考えで、【自分とクラブの相性】を見極めることに徹していた。使用ヘッドの個数がかさむのはそのためで、この姿勢こそが、正しいクラブ契約フリー選手のあり方なのだろう。
並の選手なら「クラブを替えまくると調子を崩す」リスクと捉えるのも無理がない。ところが、アンはそのことをよく理解した上で、プロセスを決して間違えずに、楽しみ、さらなる上昇のためのモチベーションにすら変えていた。
「4年前よりも、私のゴルフは成長していると思います。以前は結果優先。前ばかりをみて、イケイケという感じ。でも今年は特に、調子がいまひとつの時、今の自分を最大限に活かすにはどうしたら良いか。試合の各日、できることを精いっぱいやりました」。
過去3回の賞金女王の際は、「飛距離が結構出たし怖さがない、そんな感じでした。でも今はそうはいきません」と頭を振る。今年の賞金女王戴冠は勢いではなく、飛距離を道具で補い、マネジメントと流れを意識して、自分自身との戦いに勝てたことだと語る。
「最も注意することは、ゲームに徹すること。コースマネジメントをしっかりと行い、勝負の流れを的確につかむ。流れを途切れさせないようにしている。目前の相手と戦うのではなく、自分との戦いに徹しました」と、この考えで得たものは大きい。
過去は「賞金女王をとった次の年の目標が立てづらかった」と語るが、今は違う。あと2勝に迫る永久シード(通算30勝)を見据えて、歩みを止めるつもりはない。アン・ソンジュ、来季もクラブ契約フリーの立場を継続することは濃厚である。
Text/Mikiro Nagaoka