おやじゴルフニュース「我々はどのようにして叩くのか?」
ゴルフはそこそこそのキャリアを積んでいくと、マンネリや金欠、はたまた体の痛みなどさまざまな問題を抱えながら続けてゆくこととなります。そのとき感じているのは、ゴルフ道を極めようとガムシャラに目指していた目標を失う虚無感。ここらでひと息入れてみませんか。コラムニスト木村和久が、エンジョイゴルフの本質と核心、そしてこれからどうやってゴルフ生活を楽しんでいけばいいのかを提案し、マンガ家・とがしやすたかのイラストと共に旬なゴルフ情報をお届けします。
配信日時:2022年10月18日 03時00分
いきなり変なタイトルですいません。我々はゴルフでけっこう叩きますが、それなりに理由があって叩いていると思います。だから原因が分かれば叩く回数が減り、イコール、スコアアップに繋がると考えました。その叩くにはどんなケースがあるでしょう。まずはこんなのはいかがですか?
松山英樹も2度の池ポチャで『9』の大叩き
1)コースデザインで叩く
長年いろんなコースを回っていると、「これはなかなか難しい。さまざまな打ち方を求められるコースだ」というのに出くわしますよね。
右にOBがあったと思ったら、次のホールは左にOBがあり、毎ホールごとに気をつけるポイントが違っている。だからいろいろ考えさせられると。
そうなってくるとドローで攻めたのに、次はフェードを打たねばならない。実際はそんな芸当ができるわけもないですが……。けど、目で見た景色は脳に刷り込まれす。体が脊髄反射をして、勝手にフック目、スライス目のボールを打ってしまうのです。これって野球で例えるとうまいピッチャーに翻弄される、バッターのようなものですかね。
例えばピッチャーは第一球で、肩ぐらいの高さの内角ボールを投げて、バッターの顔をのけぞらせる。次に低い遠めのボールを投げれば体は泳いで空振り。これだけ体が振り回されると、速いストレートを投げても、バッターは反応できずに見送るとかね。
だから名コースは、野球でいえば名ピッチャーの配球みたいなものでしょうか。知らず知らずのうちに、コースに体があおられてフォームを乱して自滅させられるのです。
じゃどうやって名コースに対抗するのか? それは松井秀喜選手の打ち方を参考にすればよいのです。松井選手は悪球打ちをしない選手として有名でした。変な球を打てるイチロー選手や大谷選手みたいなことを決してしないのです。それはなぜか? フォームが乱れるのを嫌ったからです。
この松井流をゴルフに転換させると、変わったコース、トリッキーなコースのティショットはドライバーで打たず、UTや5番ウッドで刻めということです。それをやっていれば、次にドライバーを打つときに、スイングが乱れることはないのです。
とまあこんなことをプロゴルファーでもないのに書いてますが、そもそもの話は、我が師匠、後藤修先生の教えなのです。ジャンボ尾崎、中嶋常幸を教えた後藤先生は研修生に対して、いかに乱れないスイングをすべきか、その重要性を解いていました。後藤先生は元プロ野球選手です。後藤先生の師匠は野球選手、監督で、かつゴルフの日本アマで優勝(1931年)している新田恭一氏。「新田理論」というゴルフと野球の両方に通じる、下半身リードをするケガや故障をしないスイングの提唱者でした。
そんなわけで後藤先生の研修会に参加していたときは、「ディボット跡から打つな、常にいいライで打て」と言われていました。それは新田理論に基づく、悪球打ちを避ける練習だったのです。後藤先生は私に「普通のライでさえまともに打てないのに、ひどいライで打つことはない。スイングが乱れるだけだ」といつもおっしゃっていました。
というわけで我々はいつのまにか、コースに翻弄されて、スイングが乱れ、叩いてしまうんですな。変わったレイアウトや難しいライは決して無理をしないこと、思い切って刻みましょう。
ほか叩く要素を探してみますと、こういうのもあります。
2)リズムで叩く
ゴルフはテンポよく打ってるとリズムに乗れて、ナイスショットが連発します。けど逆にリズムが崩れてしまうと、平らなライでもダフッたりと大変なことに。一番多いのは、俗にいう「待ち疲れ」です。グリーンに人がいて待っている間に、いろいろ考えてしまい、リズムが崩れてしまうのです。これはどの人も体験していることでしょう。
コースの渋滞待ちで叩かない方法は、いくつかありますが、私が実践しているのは、ボールの前で待たないことです。一回ボールを確認したら20歩ぐらい下がり、ボールから離れることです。
さて3分ぐらい待たされて、前のグリーンが空きました。そしたら今しがたセカンド地点にやってきたような振る舞いをして、すたすたとボールのところへ20歩ほど歩くのです。あとは何気なくライを見て打てばよいのです。なんかいい感じのリズムが、多少戻ってきますよね。
ちなみに前のグリーンが空くのを待ってる間は、ゴルフ以外の下世話な話をしたほうがいいです。ゴルフの技術論などを話していると、つい力が余分に入りますからね。あとラウンドの流れでついやってしまうのが、「お先に〜」のパットです。片手幅の6インチぐらいのパットならまだしも、1メートル弱ぐらいはやめましょう。確かに「お先に〜」のパットは、ラインの残像が残っており、残像を利用して打てるメリットがあります。けど人より先に打つのだから、さっさと打たねばならない焦りが出がち。つまり「お先に〜」は、さほど簡単ではないのです。「入れごろ外しごろ」の距離だから、焦って外してしまうんですね。
3)同伴メンバーとの相性
やはりせっかちなメンバーがいると、リズムが乱れます。こっちも気を使って素振りもなしで、さっさと打たねばならない。早い動作をしないと何を言われるか分からない。そういう状況では、リラックスしたゴルフはなかなか出来ません。せっかちな人とのゴルフは、ちょっと考えものです。ペースを乱されないための修行と理解し、励むしかないです。もちろん、今後は一緒にラウンドするのは避けたほうがよろしいでしょう。
あと意外な伏兵が、変なスイングをする人です。ワッグルを10回ぐらいしてから打つ人がいるんですが、「次に打つか、打たない? じゃ次か?」とこっちが気を揉んでしまう。よせばいいのに、どんどん気になって、毎回ワッグルばかりのスイングを見てしまうんですね。
すると自分のスイングも伝染して、普段ワッグルなんかしないのにしてしまう。「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの言葉を借りれば、「悪い癖は良い癖を駆逐する」ということです。
ゴルフって不思議なもので、有名選手の綺麗なスイングは何回見てもマネできない。だから伝染しない。けどヘタな人間のへんてこな癖はすぐ伝染してしまう。実に不思議です。
私はへんてこスイングをする人が同伴メンバーだったら、その人のスイングを見ないようにしています。指で目を隠して、その人の打った球の方向だけを気にします。個性的なスイングはインパクトがあって、見入ってしまうんですね。とかいいながら、自分のスイングもけっこうへんてこなので、大注目されてたりして。
4)自然環境や体調で叩く
自然環境で叩くケースは、やはりアゲンストの強風時ですね。こればっかりはどうしようもありません。本能的に風に負けまいとリキんでしまい、むしろ全然飛ばないこととなります。スイングはガタガタで、ほとんど手打ち状態となり、本来のスイングはどこかに忘れ去ったようです。
ほか冬場の枯芝や凍ったフェアウェイでも叩きます。あまりひどいライのときは、同伴メンバーの許可を得て、6インチほどずらして打つのがよろしいと思います。
後藤修先生は私にいつも「マン振りするな」と、口癖のように言っていました。自分が9割ぐらいで打ったつもりでも、傍から見たら12割ぐらいの力で打っているよと。
大丈夫か? 血管切れないかとマジで心配してました。「プロでも1回マン振りしたら、その日のフォームはガタガタになってしまう」と言ってました。これも新田理論です。野球もゴルフも全力でやると、ガタが来るのが早くなるってことです。
だからプロも抑えて振っているわけで、アマチュアは飛距離の凄さに圧倒されて、マン振りしたと勘違いしているのです。300ヤードヒッターのプロに、以前お話を伺いましたが、「全然距離を抑えている。抑えてるから成績が上がった」と言ってましたからね。そのプロは「マン振りしたら350ヤードぐらいいくけど、300ヤード程度に抑えている」と言ってました。レベルが違い過ぎます。
まあいろんなことで調子悪くなったら、一度練習場でスイング調整するしかないです。本来の無風のときのスイングを取り戻して、また一から出直しですね。
■10月2日に膵臓ガンで亡くなられたかざま鋭二先生を偲んで■
ゴルフ漫画の金字塔「風の大地」の作画で多忙を極めるかざま鋭二先生を、ラウンドをエサに私のコラムのイラストを依頼しようと目論んだのが、5年前でした。もともとかざま先生とはコンペ仲間で、30年以上の付き合いになりますが、親しき仲にも礼儀あり。たった1枚のイラストの仕事を引き受けてくれるのか? 三鷹のルノアールで打ち合わせをしました。
かざま先生はふたつ返事で「分かった、その代わりゴルフやろう、どこに行く?」って、仕事そっちのけでゴルフ話に花が咲きました。あれから何度もゴルフをして、夜遅くまで飲み、濃厚な時間を過ごさせて頂きました。
その間、弘兼憲史先生監修の漫画が、私の原作で「週刊パーゴルフ」誌上で連載開始になりました。それを見たかざま先生は「嬉しいだろ。字が絵になるって凄く嬉しいんだよ。自分のイメージが映像化されるからね」と、自分のことのように喜んで下さいました。やっぱりゴルフ漫画を書かせたら日本一、この巨匠といつしか本編の漫画で競演できたらなあと思っていました。
けどかざま先生は漫画原作に厳しい人ででした。もし原作を書いたら、かざま先生は使ってくれるのかなあ。怖いなあ〜けど一緒に仕事をしてみたい。そう思っていたら、思わぬチャンスが到来しました。単発ですが、かざま先生との競演が実現しそうな雰囲気なりました。駆け出しの漫画原作者として、作家冥利に尽きます。ダメモトで恐る恐る依頼してみました。
かざま先生は「今、月3〜4本締め切りがあって、つまり毎週締め切りなのよ。でも
隔月連載があるから、そこにスケジュール入れてみるか?」と色好い返事が。それからいろいろやりとりがあっての今年の4月23日、その日はかざま先生主催のコンペの日、会場はもちろん鹿沼カントリー倶楽部です。例年15人ぐらいでこじんまりやっているのだけど、今年はやたら参加者が多く、ゆうに50人はおりました。おそらくかざま先生は何かを感じとって、出来るだけ多くの知り合いを集めたのでしょう。
その中でラウンド後、かざま先生に呼び出されました。え〜何だろう、なんか粗相したかな。あるいは仕事のことかな?
ふたりで会ったとき、ぼそっと言ったのです「この前頼まれた漫画さ、ちょっと出来なくなったんだ」と。「何か問題でもあったんですか?」と恐る恐る聞きます。「そういうんじゃないんだ、ちょっと腫瘍がみつかってさ、長くかかりそうだから、これ以上仕事入れられないのよ」。私はだいたいの事情を汲み、その仕事を断念せざるおえませんでした。
それからはかざま先生は病魔と戦うことになり、我々はその経過を一喜一憂し見守り続けました。ヤバくなったら入院するから、まだ大丈夫、そんな話を遠くで聞きながら、改めて「風の大地」を読み返していました。風の大地の舞台は鹿沼だけど、ここ5年は沖縄のゴルフ場をことのほか気に入って何度もお供させて頂きました。またいつかかざま先生との思い出の地を訪ねてみたいと思います。
いつも心の中にかざま先生はいます。先生はこの原作なら使ってくれるだろうか? そう思って、日夜仕事をする日々です。
※「おやじゴルフニュース」9月配信ぶんまで、イラストを担当してくださっていたかざま鋭二氏は膵臓ガンのため永眠されました。抗がん剤治療で闘病中も執筆してくださったことを感謝し、心からご冥福をお祈りいたします。
■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。
松山英樹も2度の池ポチャで『9』の大叩き
1)コースデザインで叩く
長年いろんなコースを回っていると、「これはなかなか難しい。さまざまな打ち方を求められるコースだ」というのに出くわしますよね。
右にOBがあったと思ったら、次のホールは左にOBがあり、毎ホールごとに気をつけるポイントが違っている。だからいろいろ考えさせられると。
そうなってくるとドローで攻めたのに、次はフェードを打たねばならない。実際はそんな芸当ができるわけもないですが……。けど、目で見た景色は脳に刷り込まれす。体が脊髄反射をして、勝手にフック目、スライス目のボールを打ってしまうのです。これって野球で例えるとうまいピッチャーに翻弄される、バッターのようなものですかね。
例えばピッチャーは第一球で、肩ぐらいの高さの内角ボールを投げて、バッターの顔をのけぞらせる。次に低い遠めのボールを投げれば体は泳いで空振り。これだけ体が振り回されると、速いストレートを投げても、バッターは反応できずに見送るとかね。
だから名コースは、野球でいえば名ピッチャーの配球みたいなものでしょうか。知らず知らずのうちに、コースに体があおられてフォームを乱して自滅させられるのです。
じゃどうやって名コースに対抗するのか? それは松井秀喜選手の打ち方を参考にすればよいのです。松井選手は悪球打ちをしない選手として有名でした。変な球を打てるイチロー選手や大谷選手みたいなことを決してしないのです。それはなぜか? フォームが乱れるのを嫌ったからです。
この松井流をゴルフに転換させると、変わったコース、トリッキーなコースのティショットはドライバーで打たず、UTや5番ウッドで刻めということです。それをやっていれば、次にドライバーを打つときに、スイングが乱れることはないのです。
とまあこんなことをプロゴルファーでもないのに書いてますが、そもそもの話は、我が師匠、後藤修先生の教えなのです。ジャンボ尾崎、中嶋常幸を教えた後藤先生は研修生に対して、いかに乱れないスイングをすべきか、その重要性を解いていました。後藤先生は元プロ野球選手です。後藤先生の師匠は野球選手、監督で、かつゴルフの日本アマで優勝(1931年)している新田恭一氏。「新田理論」というゴルフと野球の両方に通じる、下半身リードをするケガや故障をしないスイングの提唱者でした。
そんなわけで後藤先生の研修会に参加していたときは、「ディボット跡から打つな、常にいいライで打て」と言われていました。それは新田理論に基づく、悪球打ちを避ける練習だったのです。後藤先生は私に「普通のライでさえまともに打てないのに、ひどいライで打つことはない。スイングが乱れるだけだ」といつもおっしゃっていました。
というわけで我々はいつのまにか、コースに翻弄されて、スイングが乱れ、叩いてしまうんですな。変わったレイアウトや難しいライは決して無理をしないこと、思い切って刻みましょう。
ほか叩く要素を探してみますと、こういうのもあります。
2)リズムで叩く
ゴルフはテンポよく打ってるとリズムに乗れて、ナイスショットが連発します。けど逆にリズムが崩れてしまうと、平らなライでもダフッたりと大変なことに。一番多いのは、俗にいう「待ち疲れ」です。グリーンに人がいて待っている間に、いろいろ考えてしまい、リズムが崩れてしまうのです。これはどの人も体験していることでしょう。
コースの渋滞待ちで叩かない方法は、いくつかありますが、私が実践しているのは、ボールの前で待たないことです。一回ボールを確認したら20歩ぐらい下がり、ボールから離れることです。
さて3分ぐらい待たされて、前のグリーンが空きました。そしたら今しがたセカンド地点にやってきたような振る舞いをして、すたすたとボールのところへ20歩ほど歩くのです。あとは何気なくライを見て打てばよいのです。なんかいい感じのリズムが、多少戻ってきますよね。
ちなみに前のグリーンが空くのを待ってる間は、ゴルフ以外の下世話な話をしたほうがいいです。ゴルフの技術論などを話していると、つい力が余分に入りますからね。あとラウンドの流れでついやってしまうのが、「お先に〜」のパットです。片手幅の6インチぐらいのパットならまだしも、1メートル弱ぐらいはやめましょう。確かに「お先に〜」のパットは、ラインの残像が残っており、残像を利用して打てるメリットがあります。けど人より先に打つのだから、さっさと打たねばならない焦りが出がち。つまり「お先に〜」は、さほど簡単ではないのです。「入れごろ外しごろ」の距離だから、焦って外してしまうんですね。
3)同伴メンバーとの相性
やはりせっかちなメンバーがいると、リズムが乱れます。こっちも気を使って素振りもなしで、さっさと打たねばならない。早い動作をしないと何を言われるか分からない。そういう状況では、リラックスしたゴルフはなかなか出来ません。せっかちな人とのゴルフは、ちょっと考えものです。ペースを乱されないための修行と理解し、励むしかないです。もちろん、今後は一緒にラウンドするのは避けたほうがよろしいでしょう。
あと意外な伏兵が、変なスイングをする人です。ワッグルを10回ぐらいしてから打つ人がいるんですが、「次に打つか、打たない? じゃ次か?」とこっちが気を揉んでしまう。よせばいいのに、どんどん気になって、毎回ワッグルばかりのスイングを見てしまうんですね。
すると自分のスイングも伝染して、普段ワッグルなんかしないのにしてしまう。「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの言葉を借りれば、「悪い癖は良い癖を駆逐する」ということです。
ゴルフって不思議なもので、有名選手の綺麗なスイングは何回見てもマネできない。だから伝染しない。けどヘタな人間のへんてこな癖はすぐ伝染してしまう。実に不思議です。
私はへんてこスイングをする人が同伴メンバーだったら、その人のスイングを見ないようにしています。指で目を隠して、その人の打った球の方向だけを気にします。個性的なスイングはインパクトがあって、見入ってしまうんですね。とかいいながら、自分のスイングもけっこうへんてこなので、大注目されてたりして。
4)自然環境や体調で叩く
自然環境で叩くケースは、やはりアゲンストの強風時ですね。こればっかりはどうしようもありません。本能的に風に負けまいとリキんでしまい、むしろ全然飛ばないこととなります。スイングはガタガタで、ほとんど手打ち状態となり、本来のスイングはどこかに忘れ去ったようです。
ほか冬場の枯芝や凍ったフェアウェイでも叩きます。あまりひどいライのときは、同伴メンバーの許可を得て、6インチほどずらして打つのがよろしいと思います。
後藤修先生は私にいつも「マン振りするな」と、口癖のように言っていました。自分が9割ぐらいで打ったつもりでも、傍から見たら12割ぐらいの力で打っているよと。
大丈夫か? 血管切れないかとマジで心配してました。「プロでも1回マン振りしたら、その日のフォームはガタガタになってしまう」と言ってました。これも新田理論です。野球もゴルフも全力でやると、ガタが来るのが早くなるってことです。
だからプロも抑えて振っているわけで、アマチュアは飛距離の凄さに圧倒されて、マン振りしたと勘違いしているのです。300ヤードヒッターのプロに、以前お話を伺いましたが、「全然距離を抑えている。抑えてるから成績が上がった」と言ってましたからね。そのプロは「マン振りしたら350ヤードぐらいいくけど、300ヤード程度に抑えている」と言ってました。レベルが違い過ぎます。
まあいろんなことで調子悪くなったら、一度練習場でスイング調整するしかないです。本来の無風のときのスイングを取り戻して、また一から出直しですね。
■10月2日に膵臓ガンで亡くなられたかざま鋭二先生を偲んで■
ゴルフ漫画の金字塔「風の大地」の作画で多忙を極めるかざま鋭二先生を、ラウンドをエサに私のコラムのイラストを依頼しようと目論んだのが、5年前でした。もともとかざま先生とはコンペ仲間で、30年以上の付き合いになりますが、親しき仲にも礼儀あり。たった1枚のイラストの仕事を引き受けてくれるのか? 三鷹のルノアールで打ち合わせをしました。
かざま先生はふたつ返事で「分かった、その代わりゴルフやろう、どこに行く?」って、仕事そっちのけでゴルフ話に花が咲きました。あれから何度もゴルフをして、夜遅くまで飲み、濃厚な時間を過ごさせて頂きました。
その間、弘兼憲史先生監修の漫画が、私の原作で「週刊パーゴルフ」誌上で連載開始になりました。それを見たかざま先生は「嬉しいだろ。字が絵になるって凄く嬉しいんだよ。自分のイメージが映像化されるからね」と、自分のことのように喜んで下さいました。やっぱりゴルフ漫画を書かせたら日本一、この巨匠といつしか本編の漫画で競演できたらなあと思っていました。
けどかざま先生は漫画原作に厳しい人ででした。もし原作を書いたら、かざま先生は使ってくれるのかなあ。怖いなあ〜けど一緒に仕事をしてみたい。そう思っていたら、思わぬチャンスが到来しました。単発ですが、かざま先生との競演が実現しそうな雰囲気なりました。駆け出しの漫画原作者として、作家冥利に尽きます。ダメモトで恐る恐る依頼してみました。
かざま先生は「今、月3〜4本締め切りがあって、つまり毎週締め切りなのよ。でも
隔月連載があるから、そこにスケジュール入れてみるか?」と色好い返事が。それからいろいろやりとりがあっての今年の4月23日、その日はかざま先生主催のコンペの日、会場はもちろん鹿沼カントリー倶楽部です。例年15人ぐらいでこじんまりやっているのだけど、今年はやたら参加者が多く、ゆうに50人はおりました。おそらくかざま先生は何かを感じとって、出来るだけ多くの知り合いを集めたのでしょう。
その中でラウンド後、かざま先生に呼び出されました。え〜何だろう、なんか粗相したかな。あるいは仕事のことかな?
ふたりで会ったとき、ぼそっと言ったのです「この前頼まれた漫画さ、ちょっと出来なくなったんだ」と。「何か問題でもあったんですか?」と恐る恐る聞きます。「そういうんじゃないんだ、ちょっと腫瘍がみつかってさ、長くかかりそうだから、これ以上仕事入れられないのよ」。私はだいたいの事情を汲み、その仕事を断念せざるおえませんでした。
それからはかざま先生は病魔と戦うことになり、我々はその経過を一喜一憂し見守り続けました。ヤバくなったら入院するから、まだ大丈夫、そんな話を遠くで聞きながら、改めて「風の大地」を読み返していました。風の大地の舞台は鹿沼だけど、ここ5年は沖縄のゴルフ場をことのほか気に入って何度もお供させて頂きました。またいつかかざま先生との思い出の地を訪ねてみたいと思います。
いつも心の中にかざま先生はいます。先生はこの原作なら使ってくれるだろうか? そう思って、日夜仕事をする日々です。
※「おやじゴルフニュース」9月配信ぶんまで、イラストを担当してくださっていたかざま鋭二氏は膵臓ガンのため永眠されました。抗がん剤治療で闘病中も執筆してくださったことを感謝し、心からご冥福をお祈りいたします。
■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。
連載
木村和久のおやじが気になる旬なゴルフ情報