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    キャディというお仕事

    ゴルフを満喫できるのは、夢中でプレーしている私たちからは見えないところで働いている人たちがいてくれるからこそ。最高のゴルフの休日を陰からサポートしてくれるそのお仕事とは?

    配信日時:2018年8月1日 21時00分

    • ゴルフライフ
    目次 / index
    炎天下のラウンドのあとも笑顔を絶やさない浅生さん
    炎天下のラウンドのあとも笑顔を絶やさない浅生さん
    • 浅生さんのコースへでるときの持ちもの。下が夏に欠かせない保冷袋。氷や麦茶入り。左上が雨に備えるセット
    この記事の写真 3 枚を見る
    特にプライベートなゴルフでは、セルフが幅を利かせて、キャディ付きのラウンドはちょっとした贅沢かもしれません。それでもキャディのアドバイスによって、ミスショットが防げたり、心が和んだりした経験は、ゴルファーなら誰でもあるはず。もちろん当たり外れがあるという声もありますが、そんな厳しい視線があることも知りつつ、プレーを1日サポートしてくれるキャディのお仕事の中身とは?

    お話をお聞きしたのは、千葉夷隅ゴルフクラブでキャディを務める浅生ともさん(21歳)。高校を卒業するときに先生に勧められて、この仕事に就いたといいます。当然、当時はゴルフの経験はなく、キャディという仕事もまったく知りませんでした。高校時代、バスケット部にいたこともあって、ゴルフ場で体を動かしながら働けるというところに惹かれたそうですが、実際はイメージ以上にハードな仕事に驚いたそう。千葉夷隅ゴルフクラブには現在22名のキャディが在籍していますが、浅生さんは中堅クラスになります。今は休日や早番の仕事が終わったあとのゴルフに夢中。もうひと息まできた100切りが目下の目標とか。

    キャディのとある1日

    7:00 出社 その日のスタート時間に合わせてもう少し遅いことも

    「自宅を出る前に制服のアイロンがけをしなくてはなりません。この時期なら着替えを含めて3着くらい。出勤に40分はかかりますから、朝は大変です」

    7:05 朝の準備体操

    「屈伸や伸脚など5分くらい。やるとやらないでは、1日の疲れのダメージが違います」

    7:10 エントランスでお客様の出迎え

    「スタート35分前まではエントランスに立って、お客様のお出迎えをするのもキャディの仕事です」

    8:00 スタートの準備

    「キャディバッグをカートに積み込みます。それぞれのクラブの本数や、ブランド、カバーなどを念入りにチェック。プレー中にキャディバッグに入れ間違えないようにします。M2、エピックとか、かぶりやすいクラブはシャフトなどまで確認して、不安があればメモしておきます。キャディをはじめて1年くらいは、これを覚えておくことが本当に大変でした」

    8:20 スタート10分前にはティグラインドへ移動

    「夏場はいつも持参するものに加えて、保冷袋に入れた氷、麦茶。さらに自分用にスポーツドリンク500mlを2本と塩飴を持っていきます」

    8:30 スタート

    「スタートから1〜2ホールの間に、お客様の志向やスキルを読み取るようにします。たとえばティショットを打つときの集中の仕方、周囲の人の雰囲気とか参考になります。また残りの距離の聞き方、たとえば高低差や風の影響まで聞かれるのか、なども目安になりますね」

    9:30 ラウンド中

    「キャディバッグの中で、ヘッド同士がぶつかるガチャガチャという音がしないようにとにかく気をつかいます。クラブを何本かもってお客様に向かうときも、カートを運転するときも、この音ができるだけしないようにと考えます。特に注意するのはスプーンやユーティリティなど、長さが近いもの。カバーはつけなくてもいいよ、といってくれるお客様もいます。本来なら手間が省けてありがたいのですが、この音を出さないようするためにはカバーをつけたくなりますね」

    10:30 ハーフ終了

    「お客さまがカートから離れたあと、クラブの本数を確認して、お客様の帽子とグローブを乾燥させるためにカートに吊るします。そのあと社員食堂で休憩、昼食になります。汗をかいた制服を着替えて、スタート15分前にはカートに戻るようにしています。昼休みは短いですが、くつろぎすぎると、かえって午後疲れてしまうので、このくらいがいいです」

    11:20 スタート

    「お客様とは均等にしゃべるように心がけています。速やかにプレーするためには、フェアウェイをキープできる方よりも、林の中へ入ってしまいがちの方へのケアを優先せざるをえません。ですからフェアウエアにいる方には“すみません、林の中に行ってきます”とひと言、声かけをしたり、グリーンまわりや待ち時間に率先してコミュニケーションをとるようにしています」

    12:20 ラウンド中

    「スロープレーにならないように、まずはお客様の先を歩くようにすること。遅れはじめたらさりげなくクラブを手渡す動作を早めたり、カートを早く動かしたりします。またカドが立たない程度に“前が空いちゃっているので…”とか言うようにしています」

    13:20 ラウンド終了

    「カートが戻ったら、お客様とクラブの確認です。スタート前にチェックしていますが、ヘッドカバーの有無などは、あらためてお客様に確認するようにしています。そのあとクラブにブラシをかけてきれいにします。コースに来たときよりもきれいになっているようにしたいですね」

    13:40 休憩

    「早番のときはここで上がりですが、遅番は1時間の休憩後に、セルフでまわったお客様が戻ったときの、クラブの確認やブラシかけをサポートします」

    17:00 明日のスケジュールを確認して退社

    ハーフで3時間超えたときは、後ろの組に謝りにいきました

    浅生さんのコースへでるときの持ちもの。下が夏に欠かせない保冷袋。氷や麦茶入り。左上が雨に備えるセット

    浅生さんのコースへでるときの持ちもの。下が夏に欠かせない保冷袋。氷や麦茶入り。左上が雨に備えるセット

    Q ゴルフ未経験からのスタート。最初は大変だったのでは?

    A 入社してから3ヶ月くらいは、キャディマスターからの講習が中心でした。2ヶ月目くらいから先輩についてラウンドするようになります。独り立ちして、先輩との接客や対応の差を実感しましたね。きっとベテランキャディさんがつくと思っていたのか、若い私が挨拶したら、お客様にため息をつかれてしまったことがあって…。へこみました。

    Q どんなところに違いがあったのでしょうか?

    A もちろん当時はコースやゴルフの知識の差はありました。けれどほんのひと言のケアが大きいと思いましたね。たとえばティショットを曲げてOBになった可能性が高かったとします。そこで暫定球を打ってくださいとなります。お客様はボールが残っているかも…と思いますよね。そんなときに、先輩は“あの先は斜面になっていてOBに転がっていきやすいんですよ”と言って、暫定球を打つことを促します。お客様にも気を配りながら、的確で納得してもらえるアドバイスを、咄嗟に口にできる。信頼してもらえるためのプロセスですね。

    Q 今はコースでは中堅のキャディとなって、ずいぶん苦労も減ったのでは?

    A まだまだです。たとえば距離計をもってくるお客様にはちょっと緊張しますね。私たちは5ヤード単位で距離を伝えるようにしています。ところが先に距離を聞かれたあとで、距離計で測られると5ヤード以内で誤差が出る可能性がありますから、ドキドキしますね。距離計の通りですとも答えられませんし。

    Q この時期は夕立や雷も心配ですね?

    A 最低限の雨の準備はいつもしています。それでも雨が降りだしたら、カサにタオルをつけたり、カートのカバーをその都度開閉したり、グリップを拭いたりとてんてこ舞いです。急に雲行きが怪しくなったら、ラウンド中止のサイレンが鳴るまで、常に退避小屋の場所を頭の中で、一生懸命思い浮かべていたりしています。

    Q 最近、いちばんハードだったラウンドは?

    A ハーフで3時間を超えてしまったときです。キャディとしてお客様を引っ張れなかった私の責任もありますが、とにかく想定外のところにボールが次々と飛んでいって、これまでボールを捜しに行ったことがないエリアばかり。ボール捜しに手間取りました。しかもお願いしてもなかなか打ってくれないし…。正直、これはお手上げと、あきらめモードになってしまいましたね。

    ハーフが終わって、すぐに後ろの組のキャディに謝りに行きました。そして後半は3時間を超えないようにと気合を入れ直しです。“前が空いているので急いでお願いします!”と声かけも少し厳しめにしたのですが、30分程度しか短縮できず。後ろの組には申しわけないし、体力的にもかなりハードでしたね。9時間以上ラウンドしていたような感覚でした。後ろの組のキャディさんも知っているお客様だったようで、お咎めがなかったことが救いでした。お客様が楽しく、気持ちよくプレーしてもらえるように、もっと経験を積んで、勉強しなくては。


    お話をうかがったのは、東京で気温が40度を超えた記録的な猛暑の日。浅生さんはラウンド中、水分を摂るように、なるべくカートに乗って移動するようにと、プレー以外でもお客様への目配せを欠かしません。さらに自分が倒れるわけにはいかないと、コース以外でも常に水分補給を心がけ、夜もなるべく早く寝るなど自身の体調管理にも気を使います。キャディも私たちのゴルフの1日を身近で支えてくれる大切な存在です。


    千葉夷隅ゴルフクラブ/なだらかな丘陵地帯に広がる27ホールは、まっすぐ、いかに遠くへ飛ばすかを追求した本格派コース。『パーゴルフ』誌の読者が選ぶベストコースランキング各部門上位の常連で、特に接客部門では15年連続1位を獲得。その優れたホスピタリティから、キャディの評判が高いコースとしても知られる。●千葉県夷隅郡大多喜町板谷588 TEL.0470-83-0211

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