ドライバーの重心深度は深いほうがいいの?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はドライバーの重心深度のお話。
配信日時:2023年10月20日 07時53分
ヘッド性能を表す言葉に、重心深度があります。重心位置の深さを表すものですが、メーカーが発表することの少ない数値です。重心深度はフェース面から重心までの距離を表しています。最近のドライバーの平均値は40ミリ程度ですが、浅重心で30ミリ、深重心で46~47ミリとモデルによって幅があります。私の中では38ミリを超えるものは深重心で、それ以下は浅重心と考えています。
それぞれの大きな特長としては、浅重心はスピン量が減り、打ち出し角は低め。そして慣性モーメントは小さくなります。深重心はスピン量が増え、打ち出し角は高め。慣性モーメントは大きく、ブレに強くなります。ここ数年、人気を集めるピンやコブラは昔から重心の深さにこだわっていました。しかし、世界的に人気のキャロウェイも同様に「MAX」という名前をつけたりして、深重心のモデルを出すようになりました。深重心はちょっとしたトレンドといえるかも知れませんね。
重心が深いことの設計者側のメリットは、除夜の鐘でおなじみの鐘をたたく撞木(しゅもく)のイメージです。あの棒は長ければ長いほど、威力が強くなります。重心が深いと撞木が長いのと同じで、突き上げる力が強くなる、つまり芯でとらえると大きなパワーを出せるという考えです。
慣性モーメントが大きく、パワーを出せるというとメリットしかないように感じますが、デメリットもあります。ビリヤードをやったことがある人は分かると思いますが、キュー(棒)でボールの芯をつくと勢いよくボールは転がりますが、ボールの芯を外すと〝ペチーン〟てなって、ボールに斜めの回転がかかって前に進む力が弱くなります。学生時代、ビリヤードをたしなんでいた私は、このペチーンをよくやっていました(笑)。
重心が深いドライバーは、芯を外したときに〝ペチーン〟と同じ現象が起こります。パワー効率は悪くなってバックスピン量が増えるので、飛距離ロスが大きくなります。ただ、慣性モーメントが大きいので、曲がり幅は小さくて済みます。芯に当てることはゴルファーの理想ですが、ツアープロでさえ、全員がフェースセンターで打っていません。トゥ側・ヒール側と自分なりの〝芯〟で打っている人も少なくありません。そういう人が重心の深いドライバーを打つと「なんか飛ばないな」と感じるので、浅重心のドライバーを好みます。また、アイアンのように打ち込むようなスイングの人は、打ち出し角が高くなりやすい深重心の恩恵を受けることになります。
浅重心のドライバーはスピン量を減らせるといいましたが、サイドスピンも減らせるので曲がりを抑えることもできます。飛びの要素の一つである低スピンを実現できるので、打ち出しさえ高さを出せれば大きな武器になります。また、芯を外しても深重心よりエネルギー効率はいいのですが、慣性モーメントが小さいぶん、曲がる可能性が高くなります。要するにアイアンでいえばマッスルバックで、腕前がもろに出るのです。
重心の深さだけですべての性能を語ることはできませんが、自分のスイングに対して重心が浅すぎるとスピン量が減ってドロップボールになりやすく、逆に深すぎるとスピン量が増えて吹け球のようになってしまいます。一般的に、深重心がやさしいと思われていますが、自分で打ち出し角を出せるスイングの人なら浅重心の方が向いていますし、逆に深重心になると狙った球が打ちにくくなります。
クラブを選ぶときの目安のとしては、スピン量が少ないとかボールが上がりにくいと感じている人は深重心がオススメです。逆にスピン量が多い人やアッパーブローで打ち出し角を出せる人は、浅重心の方がいいパフォーマンスを発揮できます。ただ、浅重心も深重心も、ヘッドの反発係数は変わらないので、芯で当たったときの飛距離はそれほど変わらないと、私は思います。自分のスイングタイプに合わせることの方が、効率よく飛距離を出せるはずです。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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