勝者に技アリ!
渋野日向子が入るストロークを手に入れたパットドリル「ロングパットの距離感が合って、3パットがなくなった」
トーナメントで優勝する者には、光る技がある。その他を抜きん出た技の秘密を本人が語った。
配信日時:2022年2月16日 08時00分
女子ツアーの2023年シーズンがまもなく開幕する。今シーズン、誰が活躍するのかを占うために過去の優勝者に焦点を当て、勝利を呼び込んだ技の秘密を紹介しよう。今回は現在、米女子ツアーに参戦中の渋野日向子。
2019年のメジャー、AIG(全英)女子オープンで優勝を遂げ、世界から注目される存在となった渋野日向子。渋野が日本ツアーで初優勝を手にしたのも、やはりメジャーの舞台だった。
首位タイで迎えた19年ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップの最終日。ペ・ソンウ(韓国)と一騎打ちとなった優勝争いで、渋野は5番ホールで10メートル以上あるバーディパットを決めるなど、見事なパッティングストロークで初優勝の栄冠を勝ち取った。
だが、「その年の前まではパッティングが苦手だった」と渋野はいう。AIG女子オープンでも見せた気持ちいいほど入る渋野のパッティングをつくったのは、朝とホールアウト後に必ず行う2種類の練習法だった。当時、渋野のコーチを務めていた青木翔が教えてくれた。
「渋野さんはフォローでフェースを開きながら外に抜けるクセがありました。スイングも、もともとインサイドアウトの傾向が強かったのです。ゴルフは丸いボールを面で打つので、実はパッティングとショットは似てしまうのです」と、青木。
それでパターをピン型のモデルに強制的に替えて、イントゥインの軌道でヘッドを左に出しながらフェースを閉じてフォローをとるようにしたという。そして青木は、同時に二つのドリルを渋野に課した。
「朝のスタート前は7メートル、12メートル、15メートルなど、直線で打つ場所を変え7メートル以上の3カ所からカップを中心とした1メートルの円の中にそれぞれ3球ずつ入れる練習。これはロングパットの距離感を養うため」
「ホールアウト後は1メートルから50センチ刻みで円を描くように打つ場所を移動して、最長5メートルの9カ所から7球以上入れないと終わらない練習。これはプレッシャーに強くなるためと、ストロークよりも出球を意識するためです」
二つのドリルとも機械的にならないように、距離や場所を少しずつ変えながらやっていたという。ホールアウト後に行うドリルでは、終わるまで最初は3時間ほどかかっていたが、初優勝を決めたころには30分で終えるようになっていたという。
初優勝を遂げた試合後に渋野は「この二つのドリルで本当にロングパットの距離感が合うようになり、3パットがなくなりました。2メートルのシビアな距離も入るようになったんですよ」と話していた。
試合での緊張した場面でも躊躇ないストロークで転がりのいい球を打ち、次々にカップインさせる渋野日向子。今では「渋野はパットがうまい」と周りのプロたちも認めるほどだが、こうした地道な努力の積み重ねが実はあったのだ。
今年の渋野の米女子ツアー開幕戦は、2月23日から始まるホンダLPGAタイランド。さらなる活躍に期待したい。
勝者に技アリ!