栄養を与える点滴や血圧などを調べるなど、生命を維持するためのチューブ類を何本も体に付け、かろうじて心臓を動かしているような状態は、「スパゲティ症候群」とも呼ばれる。心筋梗塞などの急性の病気や事故などの場合は必要な治療だが、例えば癌の末期患者などに施される延命治療のようなケースには賛否両論がある。山崎は手術後の数日間、まさにこのスパゲティ症候群状態だったのだ。
「手術後の7日間くらいは、左手首や右腕など点滴は8本で、右の太モモの付け根には大動脈から心臓にカテーテルが入っていて固定され、体も縛られていて。小便は管で、大便はおむつです。だからもしこの状態のままずっと生きていくのだとしたら嫌だなと思いましたね。よくみんな『生きてるだけで丸儲け』って言うけれど、死にかけた人間だから言えるんだけど、寝たきりで1円も稼げないで家族の負担になるとしたら、生きているけど丸儲けとは思わないです。ずっとこんな人生を送るのなら死にたいと、それは思いましたね。これで年間何百万円もかかるとしたら娘の人生やかみさんの人生を奪っちゃう。それなら今死んで保険金が下りた方がどれだけ家族に幸せを与えられるだろうと思いました」
手術後6日間は予断を許さない状況が続き死を意識する毎日であったが、7日目に事態が一転する。
「7日くらい経って、心臓の動きがちょっと落ち着いてきた時に先生に、『俺、死なないかもしれないね』って冗談で言ったんですけど、その日の夕方に先生がエコーを見て心臓の上の方の弁が前より動いているので、『造影剤で心臓の検査してみようか』って言ったんですよ。それで、『アレ、もしかして俺生きられるんじゃないかな』って思ったんですよ」
9日目に検査をすると、それまで数値的にも希望が持てなかった山崎の心臓に明らかな快方の兆しが表れたのだ。
「レントゲン撮っている人が、『心臓が黄色くなったら心臓に血が流れている証拠だからね』と教えてくれて。それでモニターで見ていたら、『うわ、真っ黄色だ!』ってなった。僕の心臓は毛細血管までは死んでいなかったんですよ。その検査の結果を見た先生が、『山崎さん、いいかもしれない』って言ったんです。それを聞いて初めて、『あ、俺死なずに済むかも』って思えたんですよね」
「手術後の7日間くらいは、左手首や右腕など点滴は8本で、右の太モモの付け根には大動脈から心臓にカテーテルが入っていて固定され、体も縛られていて。小便は管で、大便はおむつです。だからもしこの状態のままずっと生きていくのだとしたら嫌だなと思いましたね。よくみんな『生きてるだけで丸儲け』って言うけれど、死にかけた人間だから言えるんだけど、寝たきりで1円も稼げないで家族の負担になるとしたら、生きているけど丸儲けとは思わないです。ずっとこんな人生を送るのなら死にたいと、それは思いましたね。これで年間何百万円もかかるとしたら娘の人生やかみさんの人生を奪っちゃう。それなら今死んで保険金が下りた方がどれだけ家族に幸せを与えられるだろうと思いました」
手術後6日間は予断を許さない状況が続き死を意識する毎日であったが、7日目に事態が一転する。
「7日くらい経って、心臓の動きがちょっと落ち着いてきた時に先生に、『俺、死なないかもしれないね』って冗談で言ったんですけど、その日の夕方に先生がエコーを見て心臓の上の方の弁が前より動いているので、『造影剤で心臓の検査してみようか』って言ったんですよ。それで、『アレ、もしかして俺生きられるんじゃないかな』って思ったんですよ」
9日目に検査をすると、それまで数値的にも希望が持てなかった山崎の心臓に明らかな快方の兆しが表れたのだ。
「レントゲン撮っている人が、『心臓が黄色くなったら心臓に血が流れている証拠だからね』と教えてくれて。それでモニターで見ていたら、『うわ、真っ黄色だ!』ってなった。僕の心臓は毛細血管までは死んでいなかったんですよ。その検査の結果を見た先生が、『山崎さん、いいかもしれない』って言ったんです。それを聞いて初めて、『あ、俺死なずに済むかも』って思えたんですよね」